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2015-10-15 00:00
シリア情勢と戦前の中国大陸:三つ巴の泥沼
倉西 雅子
政治学者
ロシアがアサド政権擁護の立場からシリアでの空爆を開始したことで、シリア情勢はさらに泥沼化の様相を深めています。ロシア軍は、ISIL一掃を口実としながら、反体制派を攻撃しているとも伝わります。
シリア情勢は、アサド政権、反体制勢力、ISILの三つ巴に加えて、諸外国が介入する展開となっておりますが、この構図、戦前の中国大陸の状況が思い起こさせます。当時、国民党の蒋介石政権、国民党から分離し、日本国を後ろ盾とした汪兆銘政権、そして、毛沢東率いる共産主義勢力の三つ巴となり、それぞれの勢力を、米英を中心とする連合国、枢軸国、共産主義諸国が軍事的にバックアップしていました。今日では日中戦争と表現されているものの、当時にあって、”支那事変”と称されたのは、日本国と中国が直接に国家同士の戦争として干戈を交えたわけではなく、中国大陸の内乱に対する武力介入であったからです。双方とも宣戦布告はしておらず、日本国も、戦う相手は、あくまでも”対抗政権(蒋介石政権)”であり、ゲリラ的な”武装勢力(共産軍)”と捉えていたのです。
第二次世界大戦の反省から、戦後の国際社会では、国連をはじめとした平和的な解決の仕組みを構築してきましたが、シリアに関する国連レベルでの解決に向けた取り組みは微々たるものであり、ここでも、戦前にあって形骸化した国際聯盟を髣髴させます。国際機構が機能不全に陥りますと、今日でも、内乱の発生が外国勢力の武力介入を招き、出口の見えない混乱をもたらすことには変わりはありません。しかも、シリア問題では、その混乱の余波は、難民問題となって国際社会全体を巻き込んでいるのです。
戦前の中国大陸における三つ巴は、第二次世界大戦における連合国の勝利と、国共内戦における人民解放軍による中国本土制圧という、二度にわたる武力の行使により終焉を迎えますが、果たして、人類は、70年前より賢明になり、歴史の教訓を生かしているのでしょうか。そして、戦争や内乱の結果が、必ずしも普遍的な諸価値に沿った国家の出現を約束しないことを顧みる時、より複雑化したシリア問題の解決には、今日を生きる人類の知恵と勇気が問われているように思えるのです。
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