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2015-10-15 00:00
(連載2)中国、資本逃避で「爆買い」中止命令も
田村 秀男
ジャーナリスト
日本など先進国だと、通貨高が続くと、企業の国際競争力は減退し、輸出は伸びず、設備余剰となる。企業は生産を大幅削減せざるをえなくなり、雇用や所得に負の影響が及ぶ。おのずと消費熱は冷えるはずだ。しかし、習政権は元高、賃上げと雇用維持を重視し、国有企業などの整理・淘汰をためらっている。党指令主導の経済モデルだからこそ可能な離れ業だが、限界はある。
党は中央銀行を通じてカネを創出、供給することはできても、カネの流れは支配しきれない。国内で消費し、投資する機会が少なくなると、余剰マネーが膨れ上がり、海外に流出する。貯蓄は国内で回ってこそ資本が蓄積され、蓄積された資本が投下されて経済が成長する。資本流出はこの循環を壊してしまい、経済成長率が下がる。メキシコ、ブラジルなど中南米諸国は長年、資本逃避に苦しんできた。高度成長しても資本が国内に蓄積されず、国民の大多数が豊かさを享受できない。明治維新以降、あるいは戦後の日本経済は国民貯蓄が国内で投資の財源となり、資本蓄積が進んだ。
他方、国内の資本不足は海外からの投資で補える。そのためには、活気ある国内需要に加え、通貨安や低賃金による競争力の優位が欠かせない。あるいは不動産や株式などの金融資産市場が投資家を引きつける必要がある。中国は1970年代末からの改革開放路線で外資を呼び込んで高度成長軌道に乗った。2008年9月のリーマンショック後は不動産開発ブームを党が演出し海外からの資金を引き寄せた。だが、不動産バブル崩壊とともにこの成長方式は無効になった。昨年後半からは党が、政府・中央銀行、国有企業、メディアを総動員して株価を釣り上げたが、バブルとなって崩壊した。それでも、ドルとの交換レートを当局が管理し一定の幅に固定する人民元の価値は維持され、預金となって滞留する。それが、爆買いの源泉になっている。
資本逃避が加速するなら、通貨は暴落し預金保有者の対外購買力は大きく減るだろう。1997~98年のアジア通貨危機ではタイ、インドネシア、韓国などで通貨が暴落し、経済と国民生活は大混乱に陥った。しかし、通貨安で産業の競争力は急速に回復し、2、3年で経済活動は正常化した。中国はこの大調整プロセスを避けるため、外貨準備を取り崩して元を外為市場で買い支えている。国内資金不足は海外からの借り入れで補っている。元の対ドル相場水準を維持しているから、中間層以上の旅行者が爆買いに励むという具合だ。しかし、すでに対外債務は外準を大きく超えている。八方ふさがりの習政権は突如、爆買いの中止命令を出すかもしれない。(おわり)
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