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2015-09-18 00:00
安保法案反対者は廃案から生じるリスクに応えない
倉西 雅子
政治学者
先日、参議院特別委員会において、安保関連法案に関する公聴会が開催されました。民主党の推薦によりSEALDsの中心メンバーも招かれたため、図らずも反対デモの主旨説明の場ともなったのです。
公聴会において、SEALDs代表は、安保関連法案の詳細については殆ど触れておらず、否、法案に対する漠然とした国民の不安こそが、反対デモに多くの人々が集まる要因であると説明しています。つまり、安保法案の内容のどの部分に国民が不安を抱く”危険性”があるのか、という点については具体的に指摘せずに、法案の制定手続き上の瑕疵や不満点に焦点をずらす作戦を選んだようなのです。例えば、”国民に対する説明が不足している”、反対デモの声も聴くべき”、”自民党の重要政策集における安保関連の記述が少ない”、”国会での審議で速記が止まる”、”11の法案を2本に纏めた”、”政治家が若者に希望を与えていない”、”政治家は個人として物事を考えるべき”…といった諸点です。
どれも、安保法案の本質とは関係のない付随的な部分での批判であり、しかも、首を傾げざるを得ない批判点ばかりです。正攻法の議論には耐えられないと判断したからなのでしょう。政治家の政治生命よりも個人の命が大切とも述べていますが、政治生命とは、全国民の命を預かる責任者として果たさなければならない使命とは考えないのでしょうか。SEALDsの代表は、一通りの批判の後、国民に危機感や不安を与える法案であることを理由に、”廃案にするしかない”と言い切っているのです。
それでは、SEALDsは、中国の軍事的脅威に対する漠然とした国民の不安に対して、どのように応えるのでしょうか。SEALDsが想定している安保法案が引き起こす”戦争”とは、”日本国が侵略を開始する”、あるいは、”アメリカの戦争に参加する”というものなのでしょうが、現実には、中国による侵略の可能性の方が格段に高く、その危険性は前者の比ではありません。安保法案が成立した途端、日本国が他国を攻撃するはずなく、一方、中国は、安保法案の廃案こそ好機と捉える可能性もありますので、常識的なリスク比較からしますと、安保法案成立によるリスク低減効果の方が高く、廃案にはリスク増大効果さえ予測されるのです。安保法案反対者が一方的に設定したリスクは、あくまでも過大に見積もった想定リスクに過ぎないのですから、政治的判断にあっては、目下直面している現実のリスクへの対応こそ最優先とすべきではないかと思うのです。
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