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2015-09-09 00:00
(連載1)中国外洋艦隊の萌芽
牛島 薫
学生
中国が海洋大国化を志向して外洋海軍の建設を目指してきたことは周知の事実だが、ついに本格的に海軍国としての実力を備え始めている。
9月3日の「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年」を機に中国の軍事力に対する関心が高まっている。国内全国紙も一部を除いて概ね習近平の演説内容に反して覇権主義的な意図の行事だとネガティブに報じている。また、WSJを始め西側諸国のメディアも概ね批判的にこのイベントを伝えている点でここ10年来中国優勢だった国際世論戦の風向きの変化が感じられた。不幸中の幸いといえよう。
他方、軍事パレードで披露された近代的諸兵器に危機感を感じる国民も少なからずいるに違いない。高い士気と練度を顕示する人民解放軍の兵士達によって展示されたこれらの兵器は事前に国外に知られていたものが多く専門家が驚くものは少なかったが、重大な戦略的意味をもつ展示物もあった。核兵器も乗せることができる強力なミサイルが多く登場したことだ。例えば、DF‐26(東風26)は中国メディアの報道では、速度マッハ26、射程3,600km、核弾頭搭載可能な大陸間弾道弾である。陸軍の兵器が多かった今回のパレードにあって特に海軍と密接な関係を持つこれらのミサイルは中国30年来の大望である海洋大国化への第一歩という意味で重要である。海洋大国が須らく持つ外洋海軍の目前まで迫れるからである。
最近、中国の海洋大国化に必須の戦略であるA2/ADという単語を当論壇でも幾人かの先生方が言及している。接近阻止・領域拒否と和訳される中国の対米戦略の通称だが、これだけでは、いまいちわかりにくい。しかし、この戦略の基礎概念である第一列島線、第二列島線という言葉ならすっとイメージできる人は多いかと思う。最近話題に事欠かないエリアである沖縄・台湾・南シナ海を包含する海域を囲う線を第一列島線といい、小笠原諸島からグアムを経て南洋諸島に達する線が第二列島線である。簡単に説明すると、A2/ADとは、人民解放軍が第一列島線(および第二列島線)からアメリカ軍を追い出す戦略である。(つづく)
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