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2015-08-11 00:00
アジア初の経済史会議
池尾 愛子
早稲田大学教授
8月9日の本e-論壇で言及したように、8月3-7日に世界経済史会議が京都で開催された。初回は1960年にストックホルムで開催されて、今回は第17回を数え、アジアで初めての同会議となった。その歴史的意義は学術会議や政府にも認められ、初日午前の開会セッションでは安倍晋三首相のメッセージが代読され、福田康夫元首相が共通テーマ「発展における多様性」や東アジアにちなんだ歓迎の挨拶を披露した。福田首相の時代に政策資料のアーカイブがようやく整備されたことを、日本の経済史家たちはしっかり記憶している。
もっとも、「この分野ではアジアで初めての国際会議です」と言っても、京都では多くの国際会議が開催されているので、地元の人たちの反応にはあまり特別なものは感じられなかった。本大会では、学位論文の発表や若手のポスターセッション以外では、セッションごとに参加申請するスタイルをとっている。多くの研究者が参加しやすい広めのテーマを設定して、実際に多くの参加者を獲得することを目標とし、研究仲間を増やしていくのが流儀のようだ。3つの基調セッションの他、初日の午後以降、18の並行セッションが進行した。
今回の会議の特徴の一つに、英語圏を初めとする海外の著名な日本研究者がまとまって参加していたことがあげられるのではないか。国別では日本からの参加者が最も多く、日本経済・日本経済史に関する報告が多数あり、彼らから専門的コメントを得ていたようで、大きな励みになったのではないかと思われる。彼らには特別に感謝したい気分である。もう一つには、中国本土からの参加者が多かったことが挙げられる。並行セッションでは同じ時間帯に中国関係のセッションが必ずあり、2つ以上重なることがほとんどであった。19世紀以前の中国を中心とする経済史をテーマに取り上げる報告が多かったと思われる。通訳に頼りながら研究発表・質疑応答した人がいる一方で、厳しい批判を受けた流暢な英語での報告もあった。国際比較のセッションでは、20世紀前半の中国にふれるものもあった。
残念なこともある。査証の発行が間に合わず、参加が叶わなかった中国人研究者たちがいたことである。本大会では参加登録終了後に査証申請に必要な書類が発行され、彼らは2ヶ月以上前に査証申請していたと思われるだけに、一体どうしたことなのだろうか(http://www.wehc2015.org/registration-visa_application.html)。8月23-29日に山東省済南市で第22回国際歴史科学大会――アジア初の大会――が開催されるのが、そうした人たちの慰めになるかどうか様子をみたいと思う(http://www.ichschina2015.org/cms/)。こちらの初回大会は1900年にパリで開催されている。
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