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2015-08-04 00:00
(連載1)大詰めのTPP交渉への懸念
緒方林太郎
衆議院議員
TPPの交渉が大詰めのようです。日米が何とか今回で妥結したいとかなり力を入れています。逆に総選挙が近いカナダはハーパー政権が劣勢という事もあり、競争力の低いケベック産の乳製品を守る供給管理制度を譲らないという姿勢を崩していません。あとは、乳製品で押し込みたいニュージーランドもかなり強い姿勢を示しています(ニュージーランドについてはフォンテラという輸出国家貿易企業が乳製品の輸出をやっているので、変なダンピング等やっていないかを確認する必要があります)。そういう中、思いついたことを五月雨式に書いていきます。
日本が今次閣僚会合で妥結することに拘っている理由は複数ありますが、その中でも意外に大きいものを挙げておきます。それは「今年の臨時国会で通したい」ということです。来年は参議院選挙がありまして、来年1月からスタートする通常国会でTPP及び関連法が審議に掛かると、農業問題等でやんややんやでやられてしまい参議院選挙で与党にマイナスが出る、というおそれを持っているはずです。なので、今年中にケリをつけたいと思っているはずです。となると、条約の協定文を確定する署名を急がなくてはなりません。しかし、アメリカは国内法のルールで、署名90日前に署名の意図を議会通告、協定テキスト(一部未確定部分があってもOK)を署名60日前にUSTRのサイトで公開しなくてはなりません。さすがにある程度の合意が無いのに通告することは無いというのは当然ですので、今次閣僚会合の最終盤で大筋合意しない限り議会通告出来ません。そして、それから90日ですから、8月上旬から中旬で通告できたとしても署名が可能となる最短のチャンスは11月18-19日のAPEC首脳会合です。これが終わったら、すぐにでも国会審議に入りたい、これが政府のシナリオでしょう。
それがすべて上手く行ったとしても、国会日程的にはかなりキツいです。しかし、今回の閣僚会合で妥結できなければ、このキツいシナリオですらすべて倒れます。そうすると、来年の通常国会での審議という(農業県での)選挙にマイナスのシナリオになります。だから、傍目に見ても明らかなくらい急いでいるのです。
TPP「妥結」で私が一番懸念しているのは、「大筋合意」というものです。勿論、本当に大きな筋論ですべて合意できているのであれば、別にそれでいいのですけど、政治的にプレイアップするために打ち出す「中身が必ずしも詰まっていない大筋合意」は実は国益を損なう可能性があります。以前、それで苦しんだFTA交渉を知っているので、よく分かります。つまり、まだまだ要交渉の部分が残っているのに「大筋合意」すると、今度は上記の通り署名までの日程が切られます。11月中旬のAPEC首脳会合までには全部条文の形で絶対に落としこまなくてはなりません。そこの交渉は「チキン・ゲーム」的な要素があります。「纏めなくてはならない」と思った瞬間、妥協して降りてでも纏めるインセンティブが働きがちです。そういう力学になるのがとても怖いわけです。この手の通商交渉は、細部に悪魔が潜みます。その部分が残された状態でのかりそめの「大筋合意」、その「大筋合意」に自縄自縛になり、妥協していくことはあってはなりません。(つづく)
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