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2015-07-24 00:00
ギリシャ再建の鍵は“国おこし”
倉西 雅子
政治学者
ギリシャのユーロ圏離脱の可能性は、五分五分とも見方が広がっております。“行くも地獄、退くも地獄”とも称される現状にあって、ギリシャ国民の間では、不安も不満も高まっているようです。
欧州市場(単一市場)を形成したEUでは、不況下にあっても、加盟国が採れる政策的手段は限られております。もはや保護主義的な関税率の引き上げや輸入制限措置を設けることは出来ません。また、ユーロの導入は、金融・通貨政策の権限をEUレベルに委譲することを意味しますので、財政危機に際して、自国の中央銀行に救済を求めることも、自国通貨安政策で競争力を取り戻すこともできないのです。八方塞の中で、当面の危機打開策は、財政緊縮政策による縮小均衡の達成ですが、VATの増税には消費を冷え込ませるマイナス効果もありますので、ギリシャ経済の持ち直しには期待薄です。
仮に、ギリシャ国民が、現在の生活水準を維持することを望み、長期的な展望から解決策を求めるとするならば、それは、経済成長を促す産業政策を置いて他にありません。“村おこし”、ならぬ、“国おこし”に取り組むのです。ノルウェー産のサケは、今日ではブランド品として定着しておりますが、入り組んだ海岸線を持つギリシャも、水産物の養殖には適しているかもしれません(タコも候補ですが、ヨーロッパではタコを食す国が少なく、欧州市場向けでは難しいかも…)。養殖の先端技術に関する研究機関を設け、人材育成にも努めれば、将来的には一大産業に育つ可能性もあります。かつての花形産業であった海運業や造船業についても、観光業とリンケージさせたり、大型船では競争力に乏しいものの、新たなコンセプトに基づく中型・小型船舶モデルを考案するなど、生き残りのための工夫の余地はあります。また、伝統的な手工芸品でも、デザインを都会の生活様式にも馴染むようにモダン化したり、用途を広げるなど、工夫次第では、ギリシャ・ブランドの輸出品に変身させることができます。
ユーロ離脱の如何に拘わらず、ギリシャ国民が、国庫からの給付頼りの生活を続けてゆくことは不可能です。社会保障政策に偏りがちな左派政権下では難しいかもしれませんが、ギリシャ政府と国民が知恵を出し合い、行動に移すべきは、欧州市場、そして、グローバル市場をも視野に入れた“国おこし”の策なのではないかと思うのです。
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