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2015-07-24 00:00
(連載2)TPPとお米の法的論点
緒方林太郎
衆議院議員
恐らく、今回のアメリカからの新規輸入分は国家貿易枠で処理することが非常に困難です。となると、民間貿易としての扱いで処理することを考えなくてはなりません。一定数量の低関税枠を設定した上で、マーケットメカニズムの中で需要が生じたら購入するし、需要が無ければ購入しない、これが一番スタンダードなやり方です。ただ、この場合に幾つか問題が生じます。まず、新規枠分全量輸入してほしいアメリカからするとその確約が無いことになります。交渉で「確約しろ」と相当に押し込んできているはずです。逆に日本側からすると、低関税枠のその関税の水準をどう設定するかということが悩ましいです。あまり低関税でやってしまうと、低価格のアメリカ産米がそのまま市場に流れ込んできます。かといって、関税の水準を高めに設定してしまうと、殆ど輸入が生じず、アメリカは激昂するでしょう。恐らく政権が悩んでいるのは、この民間貿易でのコメの輸入の関税水準ではないかと思います(勿論、どの程度の数量なのかというのが最大の問題ですが)。微妙なさじ加減です。しかも、民間貿易にしてしまうと、現在、国家貿易でやっている内外価格差を詰めるためのマークアップという課徴金を中抜きすることが出来ませんので、価格調整することが難しいです。
さて、民間貿易でやると仮定した上で、(1)アメリカの求める輸入数量を全量輸入する、(2)国内市場への影響を排除する、この2つの要件を満たすことがどの程度可能かということですが、上手い知恵は無いのです。(1)を満たそうとすれば、関税水準を下げる必要がありますが、それをやると(2)の条件が満たしにくくなります。
ここから先は結構選択肢のバラエティが多くなります。ただ一つ確実に言えるのは「カネで解決する」という方針です。アメリカ産米を国内に入れるけど、事実上マーケットに出さず、例えば数年後に飼料米に回すというやり方にせよ、アメリカ産米をマーケットに出すけども、それと同量の国産米を国が買い上げて、数年後に飼料米に回すというやり方にせよ、相当な国費が掛かります。どういう選択肢を採るかはまだ分かりませんが、一つ言えることは「カネで解決する」という部分です。ここは間違いないでしょう。
最近、我が党の農政猛者とこの話をしていた際、「そこまで行くと、どこに自由貿易の要素があるのだ。完全に対アメリカ食管会計じゃないか」という指摘がありました。私もその通りだと思います。ただ、上記のような仕組みを禁ずるGATT/WTO上のルールは無いのです。そもそも、(加盟国間の貿易の完全自由化を前提とする)自由貿易協定において関税割当(輸入枠)を設定することが想定されていないのです。想定されていないからルールが無い、だから、どんどん醜悪な構図が出来上がっていく、そんなイメージでいいのかなと思います。(おわり)
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