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2015-07-21 00:00
ギリシャと朝鮮:二つの半島のシンクロナイズ
倉西 雅子
政治学者
ギリシャの債務問題は、EUにおける金融の一元性と財政の多元性の間の整合性の問題でもあります。過去に前例がないと見なされがちですが、実は、戦前において、ギリシャ問題と一部重なるケースがないわけではないのです。
その前例とは、戦前の日本国と韓国との関係です。1904年8月、日本国は韓国と第一次日韓協定を結び、放漫財政にあった韓国に財政顧問を派遣します。日本国という後ろ盾を得たことで、翌1905年には、韓国政府は東京において200万円の国債を初めて起債し、その後も、行政改革費や貨幣流通基金などのために日本国から無利子融資を受けるようになりました。1910年8月の韓国併合時には、国際収支残高は総額4,559万106円にまで膨張していましたが、併合に伴い、日本国への返済義務は消滅します。また、この時、韓国が諸外国に負っていた債務も日本国が引き受けたのです。併合後は、完全な金融・通貨統合とまではいかないまでも、朝鮮半島の中央銀行として朝鮮銀行を設立し、金・銀、ならびに、日本銀行券との兌換を保証した朝鮮銀行券を発行しました。しかしながら、経済発展が遅れていた朝鮮半島では、近代化のために莫大なインフラ資金を要したこと、また、国民の生活水準が低い状態にあったことから、朝鮮総督府の歳入のみで歳出を賄うことができませんでした。このため、日本国は、1945年の敗戦に至るまでの実に35年間、毎年、朝鮮半島に対して財政移転を実施したのです。
この事例に照らしてみますと、主権平等と民族自決の原則が確立している今日にあっては、ドイツがギリシャを併合するわけにはいかず、また、金融支援機構であるESMの基金にも限界があり、永続的にギリシャの財政赤字を融資形式で補填することも不可能です。現在のEUの財政制度は加盟国の主権を尊重する多元型もありますので、ギリシャの今後については、ユーロ圏からの離脱の如何に拘わらず、自らの債務負担能力の範囲に財政を縮小するか、経済成長を促進することで歳入の拡大を目指すしか、根本的な解決方法は見当たらないのです(財政統合の声も聞かれるが、全加盟国による合意が成立する見込みは薄い…)。もっとも、ロシアや中国に永続的な財政移転、あるいは、金融支援を頼む方法もあるのでしょうが、政治的なリスクに加えて、現在のロシアや中国に、ギリシャ財政を永遠に支える余力があるのかも疑わしいところです。
ペロポネソス半島と朝鮮半島。100年という時を隔てて、この二つの半島は、財政面においてシンクロナイズしているように見えます。そして今日のギリシャと韓国の両国もまた、依存しながら支援側を一方的に悪者とみなし、相手に威圧的に要求しながら自らの欠点には目を瞑り、自助努力も自己改革も等閑にする態度も、どこか共通しているように思えるのです。
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