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2015-07-14 00:00
(連載1)安保法制:パーセプション・ゲームの功罪
三浦 瑠麗
国際政治学者
維新が国会に安保法制の対案を提出しました。政府提出の安保法制が、重要法案の審議時間の目安とされる80時間を越え、与党からは採決に向け機が熟してきているという発言が出始めていた中でのことです。本日は、維新の対案の意義と、安保論議の政治性について考えたいと思います。
今回の安保法制は、戦後日本の安全保障論議の伝統にのっとり、極めて政治的な展開を見せています。本来であれば、安全保障をめぐる外的環境の変化があり、その対処に向けた必要十分な法的手当てを論議するというものですから、比較的技術的な論争が展開されるはずです。ところが、実際には憲法秩序をめぐる問題、ひいては国家のアイデンティティーをめぐる問題へと変質しています。与野党とともに、安全保障の実務的な要請に対応することよりも、国民からどのように見えるかという、象徴性をめぐるパーセプション・ゲームを展開しているのです。
維新が今回の対案提出を通じて達成したかったことは、一種の哲学として対案路線の明確化ということでしょう。ただ反対する野党ということでなく、反対なら対案を出すということ自体に意味があると。実際、対案を出す過程で党の考え方が明確になります。政府与党との違いも具体化し、論点が整理される効果もあるでしょう。議会制民主主義とは、国民の代表が討議を通じて論点を明確にし、妥協点を探っていくプロセスそのものですから、とても建設的なことです。野党共闘の名の下に、当初は対案提出に消極的であった執行部に対して橋下最高顧問が対案路線をねじ込んだことは国会の活性化という観点からも評価できます。
対案提出の重要な副次的効果として、国民の間のナショナリズム感情を自民党の専売特許としないということもあります。ナショナリズムは政治的な感情として強固なものがあり、政党の求心力を左右します。特に、安全保障関連の法案というのはナショナリズムを刺激しやすい領域です。安全保障に対して責任感を持ち、中国や北朝鮮に対しても毅然とした姿勢をとるという立場そのものは国民の間で広く支持を集める考え方となりました。安保法制への対応をめぐって安倍政権の支持率は低下していますが、これは、国会対応における強引な印象や、巨大与党としての驕りへの懸念に対応するものであって、自民党のナショナリズムの受け手としての優位性は揺らいでいないとみるべきでしょう。
今後維新が党勢を拡大するためには、ナショナリズムの受け手としての立場を獲得が重用になってきます。かつてであれば、平和国家としてのアイデンティティーという反米色の強いナショナリズムで対抗することもできたのですが、この立場は色褪せてしまいました。民主党の中にはその立場をとる残党がいるようですが、それでは、安保政策の具体的な政策論議に入る以前に、ナショナリズムの立脚点という次元で分裂してしまうのは当然です。つまり、維新にとっては、これまでの野党とは異なり建設的な対話が可能で、ナショナリズムにも親和的な存在、という見方を国民向けに創出することが重要だったのです。(つづく)
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