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2015-06-10 00:00
(連載2)安保法制違憲論は太平楽
芹沢 健
会社員
このように冷戦終結後も新たな敵を模索し続けてきた『007』シリーズであるが、実は冷戦終結後、このシリーズはもう一つの「敵」、いうなれば「内なる敵」を視野に入れるようになった。それは、ほかならぬ「スパイそのものが冷戦時代の遺物であり不要」という「スパイ不要論」である。
2012年公開の『スカイフォール』では、この「敵」が真正面から扱われている。この作品の山場の一つは、Mが「スパイ無用論」を掲げる政治家から秘密情報部の存在意義を厳しく問い詰められるシーンである。そこでMは反論する。「あなた方と違い、我々には恐ろしい世界が見えています。我々が対峙しているのは未知の敵であり、地図にも載らず、国家でもないのです。いまや敵の姿はおろか顔も軍服も国旗も見えない、影に覆われた不透明な世界で戦わなければならないのです。我々の無用論を唱える前に答えて下さい。本当にご自身が安全だと言えますか」と。ちなみにこの作品は『007』シリーズとして過去最高の興行収入を記録したという。
さて、ひるがえってこの日本である。上のMのセリフはまさに安保法制審議で揺れる我が国への痛烈な問題提起となりはしないだろうか。英国でさえそのような「恐ろしい世界」が見えない、あるいは見ようとしない人々がいるのだ。「いわんや日本をや」である。先日の日本年金機構に対するサイバー攻撃は、その「恐ろしい世界」が表面化した一例に過ぎない。犯人はおそらく闇の中であろう。まさに「未知の敵」からの脅威である。狙われたのは、年金情報という我々一般国民の情報である。これは現実なのだ。今後このような脅威は増えることはあっても減ることを想像することは難しい。
このような状況下にあってもなお「スパイ不要論」どころか安保法制違憲論を唱えて得々としている学者の先生や、日本のあらゆるセキュリティー強化に反対している政治家・言論人のみなさんがいる。そのような方々にお尋ねしたい。「本当にご自身は安全だと言えますか」と。(おわり)
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