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2015-06-09 00:00
(連載1)安保法制違憲論は太平楽
芹沢 健
会社員
英国の作家イアン・フレミングの人気スパイ小説を映画化したいわゆる『007』シリーズでは、第1作目『ドクター・ノオ』(1962年)に始まり、直近の第23作目『スカイフォール』(2012年)まで、約半世紀にわたり、実に23もの作品が公開されている。1960年代に一時期興隆をみせたスパイ映画ジャンルはその後凋落の一途を辿ったのに対し、『007』シリーズだけがこのように長寿シリーズとなりえた理由は、主人公ジェームズ・ボンドの魅力をはじめ、さまざまに考えられるが、何より、時代や世界情勢の変遷に合わせて、敵や味方の設定を巧みに変化させてきたことがあげられよう。一言でいえば、時代に乗れたのである。
1960年代から1980年代までの作品では、ボンドは例にもれず米ソ冷戦を背景に宿敵ソ連と戦っていたが、冷戦終結後の1990年代になると今度は旧ソ連の軍事物資の流出・拡散、ロシア・マフィアの台頭など、ソ連崩壊後の新たな脅威に取り組むことになる。
その後も、ボンドは中国の軍事的台頭、北朝鮮の暴走など時代の新たな趨勢を追いかけるように新たな敵に立ち向かい続けている。例えば1997年公開の『トゥモロー・ネバー・ダイ』では、「南シナ海の公海上で、英国のフリゲート艦が中国人民解放軍空軍のミグ戦闘機により撃沈される」という2015年の今ではあながち作り話だと笑えないストーリーが出てくる。2002年公開の『ダイ・アナザー・デイ』では、「欧米に留学経験のある北朝鮮の将軍の息子」が敵役となっているが、これは、ブッシュ米大統領の「悪の枢軸」発言の直後のことである。
さらに2006年公開の『カジノ・ロワイヤル』では、「特定の国家でも、特定の思想・信条をもつ団体でもなく、自己の利益にのみ走る組織」が敵となっている。この段階になると、「冷戦時代が懐かしい」というボンドの上司Mのセリフが象徴するように、「敵が何なのか、脅威はどこから来るのか」が、イデオロギーや思想信条では測れない時代に入ったことがわかる。(つづく)
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