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2015-06-02 00:00
(連載2)知財TPP交渉の落とし穴
芹沢 健
会社員
次に著作権について。ここでも特許と同様「先進国VS途上国」という構図がみられる。すなわち、日米のようなコンテンツ大国は著作権の強化を主張するが、他方、アジアの途上国は海賊版DVDの氾濫からもわかるように著作権保護の意識はおおむね低い。この分野におけるTPP交渉で、米国は「著作権保護期間の大幅延長」や「非親告罪化」を主張しており、日本もこの要求に譲歩する方向のようだ。
この流れは、一見すると理に適ったようにも見えるが、次のような問題点もある。まず、著作権侵害の「非親告罪化」によって、日本のアニメ、漫画等の二次創作やパロディ化などが事実上否定されるという点である。現下の日本の著作権法では、著作権侵害はそのほとんどが親告罪である。条文上、厳密には違法であっても、権利者(被害者)が告訴しない限り処罰はされない。これがTPP交渉によって米国の要求通り、著作権侵害が非親告罪となると、権利者が告訴しない程度の利用行為ですらすべて処罰の対象とされる。その結果、日本がこれまで国際社会を魅了し支持を得てきたいわゆる「オタク文化」もシュリンクしてしまう、というリスクが発生する。これは日本のソフトパワー戦略上、真剣に顧慮されるべき問題ではないだろうか。
いずれにせよ、特許や著作権を含め、知財の存在意義は「創造→保護→活用→創造…」という知的創造サイクルを活性化することこそが、その最大の目的である。医薬品であれば、新薬開発のためのリサーチ・アンド・ディベロプメント(創造)→特許取得(保護)→特許料収入の獲得(活用)→特許料により得た利益で新たな開発(創造)へ、というサイクルの推進である。しかし、このプロセスにおいて、「保護」のみを重視していては、「活用」という次の段階へと進むことができず、ひいては、新たな創造もままならなくなってしまう。
TPPは、国内のさまざまな分野における改革を余儀なくさせることは間違いないが、それはリスクを超えるチャンスにつながるが戦略的意義があるからである。しかしながら、この知財の分野に関しては、現状のTPP交渉の方向性には多分に疑問が残ると言わざるを得ない。日本の知財戦略は、知的創造サイクルの推進という中長期的な観点、より大きな目標に沿ったかたちで展開されるべきではないだろうか。(おわり)
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