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2015-06-01 00:00
(連載1)知財TPP交渉の落とし穴
芹沢 健
会社員
4月29日、安倍首相が米国の上下両院合同会議にて演説を行ったが、その際「TPPによる日米関係強化」について言及したことは注目に値する。たしかにTPPへの日本の参加やそれを通じた日米関係の強化は重要である。しかしながら、個別分野に目を向ければ、話しはそう簡単ではない。
現在、21の分野で個別交渉が進められているTPPであるが、そのうちとくに交渉が難航しているのが、「農業市場へのアクセス」と「知的財産」である。ここでは、このうち後者、すなわち知的財産(知財)に関するTPP交渉の現状とその問題点について考えてみたい。一口に「知財」といっても、特許、実用新案、意匠、商標、著作権など様々な分野があるが、とくに交渉が難航しているのは「特許」と「著作権」の二つの分野についてである。
まず特許について。一般的に「先進国VS途上国」という構図がみられる。すなわち、米国、日本などの先端技術を有する先進国は、特許収入を確保するために特許権の保護期間の延長を主張するが、他方、そのような技術を持たない途上国は、特許使用料を払って海外から技術を導入しなければならないので、保護期間の早期切り上げを要求する、というわけである。そしてTPPは、おおむね先進国側の主張に沿った(特許の保護期間を延長する)方向で交渉が進んでいるようである。
たしかに知財保護は重要であるし、それなしには知財の概念そのものが揺らいでしまうであろう。しかし、知財保護の考えで突っ走ると少なからぬ弊害が生じる分野もある。例えば、医薬品についてみてみると、現状、日本では、新薬(先発医薬品)は特許法で20~25年間保護されているが、TPPが締結されると、この保護期間がさらに延長され、その分ジェネリック医薬品(後発医薬品)の製造・販売・普及が遅れてしまう。製薬メーカーからすればうまみのある話だが、超高齢社会を迎える日本としては、ジェネリック医薬品の普及による医療費削減という課題から目を背けることはできない。また途上国では、ジェネリック医薬品へのアクセスはまさに国民の生命線となっている。したがって、この分野におけるTPP交渉では、医療費削減という国内の課題という観点のみならず、「人間の安全保障」という観点にも鑑み、「特許権の保護期間の延長を認めるものの、医薬品については例外とする」との規定を定めるべきではないだろうか。(つづく)
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