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2015-05-27 00:00
(連載2)イスラム主義と復古主義
緒方林太郎
衆議院議員
そこで想像される「イスラム」の姿は、各人が置かれた状況に影響を受け、かつ想像の範疇でのみ再現されるということなので、本当にそれが預言者ムハンマドの時代を的確に再現しているかどうかというと怪しいと私は思います。そもそもムハンマドの時代は、様々な社会ルールもなく、正にトマス・ホッブズが人間の自然状態を闘争状態と述べたのを地で行くような社会だったでしょう。そこに本当に原始イスラム社会の理想があったかと言えば、多分そうではないと思います。
そういう中で、今、イスラム(原理)主義と呼ばれているものというのは、実は「本来、イスラム創始時に想定していなかったような条件下に生きるムスリムが、追憶のかなたから現代社会に『理想のイスラム社会』を再構築しようとした」ということなのだと思います。それは自ずと純化され、現実離れしていくのです。その再構築のされ方は、今のイスラムが置かれている状況に大きく影響されています。先進国でマイノリティの立場に置かれ、ルサンチマンを持っているイスラム、聖地メッカから遠く離れた地域で発展し、正統性を求めるイスラム、色々な発展の仕方があります。
その論の流れで、最近、日本社会の底流にある右派復古主義的な動きにも似たようなものを感じるようになりました。戦後教育の中で、戦前を暗黒社会のように描いたことは問題だと思うのですが、その反動として戦前の社会を過度に美化するようなところがあります。その論調をよく見ていると、上記のイスラム(原理)主義と似ているのです。近年の復古主義的な動きは、昔の日本社会の理想化された部分だけを抽出して、新たな世界観を構築しているように見えます。一部政党が提示している憲法草案などにその端緒を見ることができます。それは残念ながら、日本の歴史のいずれの時点においても存在しなかった社会です。
過去を追憶し、純化し、その中から(存在したことのない)社会を構成していこうとする動きの背景には、恐らく現状に対する不満、コンプレックスのようなものがあるのではないかと私は見ています。現状が上手く行っていないから、過去の先人を美化してすがりたくなっているのではないかと不安になります。それは実現不可能ですし、根本のところで健全でない何かを感じます。「イスラム(原理)主義」と「(日本に跋扈する)復古主義」は、その思考回路において、似たようなところがある、そこまで言うと言い過ぎかもしれませんが、論点提示の観点から刺激的な書き方をしておきます。あえて、特定の個人、政治団体を批判しない観点から抽象的な書き方になりました。あとは察してください。(おわり)
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