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2015-05-26 00:00
「真の進歩主義」の復権を求めて
浅野 慎司
団体役員
冷戦期、わが国の論壇はイデオロギー論争で盛り上がっておりました。冷戦が、自由主義・市場経済を奉じる米国と、共産主義・計画経済を奉じるソ連との間で戦われたのとパラレルなかたちで、論壇では、米国寄りの「保守派(あるいは保守主義)」とソ連寄りの「進歩派(あるいは進歩主義)」に分かれて激しい言論バトルが繰り広げられたわけです。「進歩派」は、共産主義を歴史の最終到達点と捉え、そこに向けた革命主義ないしは急進主義を採りました。対して「保守派」は、共産主義の危険性を退けつつ、人間社会の大事な部分を守るために必要な変革はする、といった漸進主義を採りました。重要なことは、いずれの立場についても、社会の変革の可能性については認めていた、ということです。違いは、その方向性と手段でした。
冷戦とパラレルをなしていたこのイデオロギー論争自体は、当然ながら、冷戦終焉とともに決着がついてしまいました。ソ連は崩壊しましたが、米国は生き残りました。そして自由主義・市場経済はいまや国際社会のスタンダードとなりつつあります。細かな論点はともかく、総じてみれば、どう考えても米国が勝ったと言わざるを得ません。私はべつに米国礼賛をするつもりはありませんが、米国が冷戦を通じて守り抜いた価値や理念を、いま最大限に享受している自分がここにいる、という事実を曲げることはできません。いまの日本が、旧ソ連のような国になっていたらよかったのに、とは逆立ちしても言えないのです。
本題に入ります。私は「進歩派」あるいは「進歩主義」という言葉の復権を願っています。この言葉は冷戦期のイデオロギー論争であまりに「色」が付いてしまいました。きわめて赤い色です。しかし、そのような「色」さえ拭いされば、この言葉は、21世紀の国際社会が追及するべき価値や理念(要するに米国が冷戦を通じて守り抜いた価値や理念)を奉ずる立場を指し示すことができると考えるからです。むしろ、そのような価値や理念をないがしろにしているロシアや中国その他の強権的な国々こそが「保守派」を通り越して「反動」とすら言えるでしょう。
冒頭に書いたように冷戦期の「保守派」は、「共産主義の危険性を退けつつ、人間社会の大事な部分を守るために必要な変革はする」という立場を採っていました。ここでいう「人間社会の大事な部分」には、自由、平等、基本的人権、法の遵守などが含まれます。人によってはさらに文化や伝統も含めるかもしれません。いずれにせよ、真の進歩主義には、何を守り、何を変えるべきかについて、とてつもない深い洞察が伴うべきなのです。その点、冷戦期の「進歩派」は極めて浅い進歩観の持ち主でした。さあ、21世紀の国際社会には共産主義に代わる新たな敵がうようよしています。これらあらたな「反動」との戦いは当面続くことでしょう。いまこそ真の「進歩派」の出番なのです。日本はその「前衛」に立って国際社会をリードすべきではないでしょうか。
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