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2007-01-21 00:00
安倍首相の欧州歴訪の成果(NATO演説等)を評価する
佐島 直子
専修大学経済学部助教授
相次ぐ閣僚の不祥事などで、安倍政権の前途に暗雲が立ち込めている。しかし、私は、安倍外交、とりわけ1月に行われた欧州歴訪を高く評価したい。欧州歴訪の陰の主役は、なんといっても中国であった。中国は不透明な軍拡を続けるばかりでなく、エネルギー確保のため世界のいたるところで石油資源を買いあさっているが、そのような状況下、欧州連合(EU)加盟国に中国への武器禁輸解除を求める動きが強まっているのを、日本は看過してはならないからである。
「欧州は中国に対する認識が甘い。単なるビジネス相手ぐらいに思っている。その点について話したい」安倍首相は欧州歴訪前の1月初め、周囲にこう漏らし、対中武器禁輸の解除を重要議題とする考えを示していたというが、実際、独メルケル首相との会談で、対中武器禁輸解除に反対する日本の立場を説明し、英ブレア首相との会談でも「サラリとした言い方だったが、しっかり反対といった」(首相同行筋)という。首相就任直後に中国を訪問し、小泉政権下で冷え切った日中関係の改善を促して、温家宝首相の訪日を実現するなど、安部政権の対中国外交は一見、融和的なものだが、中国が政治、経済、軍事とあらゆる方面で日本に挑戦を続けている現実について、欧州各国の首脳にはっきりとしたメッセージを送った。
中でも、NAC(北大西洋理事会)で行った演説で、安倍首相は、NATO各国との連携の重要性を次のように強調した。すなわち、「私達は、急速な国防費の増大、透明性の欠如等のいくつかの不確実性が中国を取り巻いていることも理解する必要があります。中国の行く先を引き続き注意深く見守る必要があります。また、中国がこの地域の安全保障環境改善のため、一層多くの責任を分かち合うよう、中国政府との間で対話を継続する必要があります。このため、価値を共有するパートナーたちは、協力を強化していくべきです。(中略)日本とNATOは協力の新たな段階へと移行するべきだと考えます。私の指示に基づき、日本政府は、既にNATOとの今後の更なる関係強化に向けての基礎固めを始めています。平和構築、復興支援、災害援助等の分野で役立つような知識と経験を共有する余地はたくさんあります。私の内閣の閣僚や政府関係者は、NATOのカウンターパートと定期的に会談することを期待しています。また、日本とNATOが共通に関心を有する分野についてNATO関連会合に積極的に参加することを希望しています。3月に東京で予定されている次回日・NATO高級事務レベル協議は、今後の協力に向けた計画を練る機会になるでしょう」
そして次のように締めくくった。「皆様、最後に、将来の世代に向けた私達の使命について述べたいと思います。私達は生まれつつある民主主義を強固なものとし、人権が抑圧されているところにおいて人権の尊重を確固たるものとし、人々が絶望に打ちひしがれたところではより明るい未来への希望をもたらす責任を負っています。私達の目標は、一人一人の個人が誇りをもって生きられる、より安全な世界を造りだすことです。この目標を現実にするには、私たち自身が能動的に行動すると同時に、長年当然視されてきた考え方の枷から脱却することをおそれてはなりません。我が国は、国際社会におけるより大きな役割を求める世界の増大する期待に応える用意があります。私の描く日本の将来像は、世界に開かれ、やってくる困難に立ち向かう『美しい国』です。私の指導の下、この構想を実現するため、日本は一連の改革やイニシアティブを推し進めて参ります。目の前にある課題はあまりに大きく、日本とNATOが別々に行動するような無駄は許されません。これまでの努力の成果の上に立ち、平和で安全な未来を作るため、ともに働こうではありませんか」(外務省HPから)
日本は、グローバル・デモクラティック・コミュニティの一員であるが、中国はそうではない。民主主義の規範強化をめざす、欧州各国にとって、その意味するところは少なくない。
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