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2015-04-30 00:00
日米新潮流達成で安倍訪米外交の勝利
杉浦 正章
政治評論家
台頭する中国に対して、安全保障でも経済分野においても日米がトータルで優位を確保し、法を無視した海洋進出を厳しくけん制する方向が定まった。これは首相・安倍晋三の外交戦略が米国によって完全に受け入れられた事を意味し、外交上の勝利を達成したことに他ならない。日米ガイドライン、首脳会談、上下両院における首相演説は、一貫してこの日米新潮流を確認したことになる。マスコミの視線はとかく「歴史認識」に絞られがちであり、中韓両国も日本の報道ぶりを見て今後も批判を繰り返すだろうが、安倍の歴史認識は議会のスタンディング・オーベーション(総立ちの拍手)によって支持された。とりわけ韓国はもういいかげんに矛を収めた方がよい。不毛の歴史論議からは何も生まれない。上下両院合同会議における安倍演説で第一に注目されるべきは、やはり安全保障問題であろう。安倍は日本の首相としては珍しく戦略的方向性を打ち出している。まず安倍はオバマのアジア回帰のリバランス政策を「徹頭徹尾支持する」と言明、米戦略と歩調を合わす方針を明確にするとともに、その原点となる「安保法制」について「夏までに必ず成立させる」と述べた。これは発言が完全に対米公約となることを意識したものであり、野党の反発は覚悟の上での発言であろう。
その上で安倍は「日本は豪州、インドと戦略的な関係を深め、ASEANや韓国と多面にわたる協力関係深める。日米同盟を基軸にこれらの仲間が加わると地域は格段と安定する」と述べた。これと合わせて「太平洋からインド洋にかけての広い海は、自由と法の支配が貫徹する平和の海にしなければならない」と述べたが、これは明らかに日・米・豪・印を軸とする対中封じ込めの戦略である。米国にとっては東アジアの最大の懸念は中国の台頭であり、これを何とかコントロールしたいというオバマの意図と合致する。イラク、アフガン戦争で疲弊した米国にとって、一国のみで中国に対峙(たいじ)することは、もはや困難な情勢に立ち至っており、そこに現れた安倍の積極的平和主義は“渡りに舟”であったに違いない。経済問題にしても環太平洋経済連携協定(TPP)について安倍は「単なる経済的な利益を超えた長期的な安全保障上の大きな意義がある」と述べたが、これは国防相・カーターが「空母1隻と同じぐらい重要だ」と発言したのと軌を一にしている。オバマは記者会見で「強い日米同盟が中国への挑発となるとは考えない」と“対中配慮”ともとれる発言をしているが、これはリップサービスに過ぎない。なぜならガイドラインを対中対峙路線に大きくかじを切りながら、中国の頭をなでるようなものだからだ。
もちろん日米両国とも「挑発」などという大人げないことはしまいが、「けん制」と「対中包囲網」であることは火を見るより明らかだ。NHKの解説委員・島田敏男らが例によって“非安倍”の立場から「尖閣でアメリカが何処までコミットするかがあいまい」などと我田引水型解説をしているが、米国が日米同盟強化に打って出た背景を理解できていない。今後の日本の論議は、煎じ詰めれば今そこに存在する中国の脅威が見えている人と見えていない人の論議であり、中国の防空識別圏設定や領海侵犯が何を意味するか分かる人と分からない人との論議でもある。首脳会談でアジアインフラ銀行(AIIB)への慎重なる対処 を確認したのも当然である。安倍が「公正なガバナンス」の必用を強調、オバマが、「多国間の融資機関を持つなら運用の基準が必要だ」と述べた事は、両首脳が一致して行動する方向の確認であり、一部にある米国の「抜け駆け」などはあり得ないことを意味する。筆者の見通し通りに当分参加見送りの線は動かない流れとなった。安保で対峙し、金融で同調することは現段階では矛盾の極みだ。
歴史認識について安倍は演説で、最近の発言である「深い反省」を1歩踏み込んで「痛切な反省」と言った。「戦後の日本は先の大戦に対する痛切な反省(feelings of deep remorse over the war)を胸に歩みを刻んだ」と発言した。これは村山談話の一部を取り入れ、米国内に根強い「安倍リビジョニスト(歴史修正主義者)論」を強く意識したものであろう。しかし村山富市が出し小泉純一郎がそれをコピーした「植民地支配と侵略」「心からのおわび」には言及しなかった。安倍は「自らの行いがアジア諸国の国民に苦しみを与えた事実から目を背けてはならない。これらの思いは歴代首相と全く変わらない」と十把ひと絡げにするにとどまった。戦後70年、もうおわびを繰り返す時でもあるまい。この路線はちゅうちょなく8月の「首相談話」に反映すべきであろう。今後野党が首脳会談を突くのはこの「おわびなし発言」と、「安保法制に先行するガイドライン改定」だろうが、いずれも重箱の隅をつつく論議にとどまり、8月には法制は実現するだろう。
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