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2015-04-26 00:00
(連載1)アハメド『世界恐慌』を読む
池尾 愛子
早稲田大学教授
遅まきながら、ライアカット・アハメドの『世界恐慌:経済を破綻させた4人の中央銀行総裁』(上下)を読んだ。原著は2010年、邦訳は2013年の出版である。1997-99年に東アジアなどで発生した金融危機、2008年の米大手投資銀行リーマンブラザーズの破綻に端を発した経済危機について、専門家たちによる研究のほか、ジャーナリストの聞取り取材を基にした詳細な書物が登場している。同様の手法で1929年の経済危機を歴史的に再構成しようとする研究成果の一つが、『世界恐慌』(原著主題『Lords of Finance』)である。
1914年にヨーロッパで戦争が始まると、19世紀ヨーロッパ文明を支えた制度の一つとされる国際金本位制が停止された。1918年の停戦後、安定した国際金融・障害のない貿易の実現を目指して金本位制に復帰するために、各国の中央銀行家たちが各国の金融制度や現状についての情報を交換して協力して制度を調整する必要性が発生していた。著者が焦点をおいたのは、モンタギュー・ノーマン(イングランド銀行総裁)、ベンジャミン・ストロング(ニューヨーク連銀総裁)、ヒャルマール・シャハト(ドイツ帝国銀行総裁)、エミール・モロー(フランス銀行総裁)である。彼らは国際郵便、会合、そして国際電話を使ってある程度定期的に情報・意見を交換しており、金融ジャーナリストたちから常に注目されていた。
アハメドは当時の報道記事を効果的に使って、国際金本位制がいったんは再構築されていくものの、世界経済をパニックと不況に陥れながら、結局は完全に棄却されていく過程を歴史的に再構成したといえる。日本では宮崎義一が『「ケインズ革命」以後の現代資本主義像』(1967年)で、アメリカでの当時の報道記事を交えて、ウォール街の一部の銀行家たち(および経済学者)の予想に反してパニックと不況がじわじわと広がり深化してゆく様子を描き出していた。「永遠の繁栄」が続くと信じてのコメントを専門紙に寄せていたのである。
1929年10月のニューヨーク株式市場での大暴落が引き金となって、パニックと不況がアメリカおよび世界に広がった一方で、その原因と過程はかなり複雑であったことが多くの研究者たちによって既に明らかにされていた。金本位制が足枷になっていたとの認識も共有されている。大不況に突入してから、アメリカで将来の金融制度を構想するような研究がようやく始まり、1944年のアトランティック・シティ会議、ブレトンウッズ会議に向けて出された、いわゆるホワイト案(後の国際通貨基金-IMF-設立に向けてのアメリカ案)につながっていく。(つづく)
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