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2015-04-05 00:00
(連載2)朝日記者による近著「朝日新聞」の問題点
中村 仁
元全国紙記者
朝日の過剰なエリート意識を批判しながら、筆者たちもそれに染まっているように見受けられます。「かくも優秀な人材を大量に集めておきながら、エネルギーを社内闘争で消耗」、「民間における最難関の採用試験」といった表現は、自社のことをそこまで言うかね、ですね。
読売新聞憎しの気持ちも相当、強いようです。「読売の記者は皆、社内民主主義や言論の自由への幻想を最初から持ち合わせていない」、「朝日の記者は読売を別のカテゴリーの大衆紙とみている」とは、いくらなんでも言いすぎでしょう。こういう表現は、読売に対するある種のコンプレクスの裏返しと解釈したほうがいいのかもしれません。日経新聞を見下したい気持ちも強いらしく、「わが社は総合情報産業であって、記者に求めるのは正確なデータだけだと、日経幹部が発言した」という箇所があります。そういう側面はあるにしても、それが日経の全体像ではないでしょう。
とばっちりを受けたのが、著名評論家の田原総一朗氏です。原発所長の証言捏造報道の直後、当時の朝日社長が「これこそ第一級のスクープ」と、社内で持ち上げました。田原氏は「他紙が朝日のスクープを追いかけないのは、抜かれたことに対する嫉妬心のむき出し」と書いたと、この本は紹介(実際に書いていた)しています。本当の事実(結局は捏造)を知らないで、ありそうなことを想像して、もっともらしいことを世間に発言するタイプだとの評価でしょうか。
朝日の販売部数は激減しています。2010年に800万部を超えていたのに、14年10月には702万部に落ちています。消費税引き上げのほか、昨年秋には慰安婦・原発報道批判から20万部、減ったそうです。新聞販売店への押紙・積紙(読者に売れていない新聞のむだな滞貨)が大量にのぼり、消費税の引き上げ時の前後に整理(発行・販売部数の削減)したことが100万減の大きな原因とみられます。これは新聞界共通の問題でもあります。せっかく外部機関による「朝日新聞の経営分析」という章を設けながら、合理化、効率化が遅れている販売慣行を掘り下げていません。この本を読んだ新聞社志望の学生の多くは、きっと失望していることでしょう。事実に迫り、発掘する取材力、あふれかえる情報に対する分析力など、新聞社の機能は社会にとって不可欠です。情報過多時代における新聞社の将来像をもっと提示して欲しかったですね。(おわり)
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