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2007-01-09 00:00
ロシアの問題は中国にも存在する
小笠原高雪
山梨学院大学教授
日本国際フォーラムの村上正泰主任研究員の1月8日付の投稿を興味深く拝見すると同時に、いくつかの感想を持ったので、今回はそのことについて記しておきたい。
村上氏は上記の投稿のなかで、石油・天然ガス開発事業の「サハリン2」をめぐる最近の動向に言及しつつ、「支配者が強権的手段を用いて権益を拡大し、それを自らの権力基盤のために振り向けるというやり方は何ひとつ変わっていない」と指摘している。こうした指摘は現段階では妥当なものといえるであろう。「ロシアはG8の一員にふさわしくない」という英エコノミスト誌の主張がどれくらい一般的なものとなっているかは分らないが、そういう主張がヨーロッパに出始めたことは注目に価する。
これは国家権力の恣意的介入から解放された市場経済の存立基盤がどれほど存在するかという問題である。そして、その場合、われわれとしては、類似の問題が中国にも存在していることを忘れるべきではないであろう。現にEUは2004年に、いわゆる「市場経済資格(MES)」を中国に対して認定しないことを決定している。われわれは、中国は経済的には市場原理が導入されたが政治的には民主化が進んでいない、といった議論を行ない、後者に主要な関心を向けがちであるが、問題は前者にも存在している。
私は以上のことから、中国やロシアとの経済交流に冷水を浴びせようとしているわけではない。「対露ビジネスはこれからも続くであろうし、それはそれで望ましく必要な面もあるけれども、その際には決して警戒心を怠るべきではない」という村上氏の主張は妥当であるし、類似のことは中国にもあてはまるはずである、というのが私の言いたいことである。さらに、議論を国家間の外交に絞るならば、国益のために取引や妥協を行なう余地は、中国とのあいだにもロシアとのあいだにも存在しよう。
しかし、もしわれわれが東アジアの地域協力を本気で深化させてゆこうとするのであれば、民主主義や市場経済といった基本原則の問題はどうしても素通りできない。物事を「進化の過程」として捉える視点は大切であるし、相互に学習しあい啓発しあう姿勢も必要であるが、それらは基本原則の問題を素通りするということではない。このような観点からみるならば、われわれとしては、仮に東アジアの地域協力の深化を課題とするとしても、まずは共通点の多い国々との提携を優先させるべきであろう。
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