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2015-03-15 00:00
米国は、尖閣問題で日中間で棚上げに合意しているとの立場か
津守 滋
東洋英和女学院大学名誉教授
先日JFIR主催の日米対話「新ガイドライン時代の日米同盟」で、パネラーの元国務省高官(R.デミング)が、配布した発言のレジュメで、尖閣問題について、「日中間で棚上げに暗黙の合意をしている(tacitly agree)」と書いているが(会議の場では、同人はこの部分を発言しなかったと思う)、もしこれが国務省の公式の見解であれば、問題である。この問題については、日本では数多く議論が行われているので、今更繰り返すまでもないが、日本政府の公式見解は、「棚上げについて、明示の合意は言うまでもなく、暗黙の合意もない」である。筆者もこの主張は正しいと思っている。
72年の日中国交回復時の田中角栄・周恩来会談や、78年の鄧小平の発言をめぐる日本側の対応について、どのように解釈するか意見の違いがあり、日本外務省の元高官の一人が、「暗黙の合意」があったとの見解であることは承知しているが、これは少数説で、いずれにしても政府の公式見解ではない。日本政府の立場は、尖閣の領有権については、国際法上も、歴史的にも日本の領土であることは自明であり、この立場は一貫している。1894年に日本の領有が確定して以来70年以上も中国側からまったくクレームがつかなかったこと一つをとっても、日本政府の立場の正当性はゆるぎない。
米国政府がもしあえて中国側が主張する「棚上げ論」に加担するならば、少なくとも公平・中立でなく、決して見逃せない。そもそも米國は、尖閣に安保条約第5条が適用されるとしながら、領有権については、どちらの立場にもくみしないという、到底納得しがたい首尾一貫しない態度で終始している。この会議では、北方領土以外について(すなわち竹島についても)同様の態度であることを強調していたが、理解に苦しむ。
尖閣の領有権についての立場はともかくとして、棚上げ論については、事実に即して米国の間違った解釈を至急正す必要がある。
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