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2015-01-30 00:00
「中道」の難しさ
緒方林太郎
衆議院議員
「(政治的な)中道」というのは、とても美しく聞こえる言葉ですが、ともすれば「足して2で割る」的な考え方と混同される時があります。相当に足場をしっかりとしていないと流されてしまうのが「中道」です。これは大学時代の「ヨーロッパ政治史」で馬場康雄教授が話していたのを今でも覚えているのですが、19世紀末から20世紀半ばくらいまでのフランス政治では、かなり明確に「surenchere(せり上げ)」という現象がありました。何かと言うと、当時のフランスでは最左派からスタートした政治家、政党がどんどん右に寄っていったということを指します。左派的価値観が非常に「知的」だとされたのでしょう、どんどん最左派の所に新しい政治勢力が入ってきて、仕方ないので既存の最左派勢力が右側に押し出されていったのです。
分かりやすいケースとしては、第一次世界大戦を率い、ヴェルサイユ講和条約に漕ぎ着けたクレマンソー首相です。最初は最左派からキャリアをスタートして、最後は右派で政治家人生を終えています。政党についても、当時は「急進」とか「進歩」という名前を持つ保守政党もありました(最初は左派政党だったのが右派に押し出されてしまった)。
今の日本にもこの「せり上げ」があるような気がしています。ただし、今回は右から左への力学です(何故、右から左への力が働くかは上手く説明できませんけど)。新たな右派勢力が幾つか日本に生まれ、保守政党である自由民主党は中道側への圧力が常にあるように見えます。そういう中、安倍政権は軸をかなり明確に右側に置きつつ、中道側に乗り出しているのが一定程度成功しています。それに連れて、中道勢力は左側に押される力を受けます。しかし、最左派のところにはデンッと共産党が控えています。この「せり上げ」の力に抗していかないと、実は今の日本で漫然と中道を主張していると、中道に乗り出してくる自由民主党と不動の共産党との間で活動エリアがとても狭くなってしまうということになります。
本当はこういう右から左という直線上に政治信条を並べることは好きではありませんし、自分自身そういう問いが好きではありません。ただ、何となくこの政治モデルが当てはまるのかなと思って、あえて提示しました。上記を補足しながら纏めると、「中道」で重要なのは、①足して2で割らないこと、②中道的価値を明確に定義すること、③(現在の日本の政治情勢では)右側からやってくる左向きの圧力に流されないこと、ということではないかなと思います。
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