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2015-01-23 00:00
(連載2)「積極的平和主義」の落とし穴か
尾形 宣夫
ジャーナリスト
日本は中東問題では中立的立場を取っている。だから、「まさかイスラム過激派集団の攻撃目標となるとは」が偽らざる大方の反応だ。公安関係者の間では「あり得る事態」とされていたらしいが、政治的に予測することはなかった。世界的な石油危機を起こした第4次中東戦争で「石油が断たれた」経験を踏まえて、日本は地道に築き上げてきた外交努力が実り、アラブ各国からの信頼を高めていたからだ。だから、国際的なテロとの戦いで欧米各国と歩調を同じくする日本が名指しで攻撃されることもなかった。この〝常識〟が今回、崩れたのである。攻撃対象とする材料に事欠いていたイスラム国が、首相の歴訪を「好機」と判断、公表したとしか考えようがない。20日ネットで公表されたビデオ声明は安倍首相を名指しで「おまえは8,500キロも離れていながら、自発的に十字軍に参加した」と言った。問答無用の決めつけだった。
邦人が身柄拘束された事件で日本政府が過去に取った対応で参考になるのは、1977年9月の日本赤軍が起こしたハイジャック 「ダッカ事件」と1999年8月に金・銅鉱床の探査を行っていた日本人鉱山技師や通訳らが反政府武装組織に誘拐されたキルギス邦人誘拐事件がある。ダッカ事件では政府が要求どおり、身代金16億円の支払いと拘留中の赤軍メンバーの釈放を受け入れた。当時の福田赳夫首相は「1人の命は地球より重い」と語り、「超法規的措置」と説明した。だが、先進各国の反応は「酷評」だった。キルギス事件では日本人技師は無事釈放されたが、人質解放に当たっての不透明な交渉、身代金が支払われたのか否かもすっきりしないままだった。
近年、国の危機管理が強化されたといっても、この種の事件を予防することは不可能に近い。首相が今度の中東訪問で役割を果たそうとした意欲は評価できるが、心配なのは首相の「地球儀外交」「積極的平和主義」にドライブがかかり過ぎていないか、ということである。第2次安倍政権ができてから、首相の外遊は50回を超える。従来の政権のそれを優に超える世界を股にかけた安倍外交の政治色が濃いだけに、世界の日本を見る目も大きく変わったと見るべきだろう。急激な外交の転換は、その跳ね返りも考えて置かねばならない。
これからの日本の出方を予測する上で注目したいのは米政府の動きだ。オバマ米大統領は一般教書演説でテロとの戦いに寸分の妥協がないことを強調、日本への強力な支援を表明した。オバマ演説を日本の強力な後ろ盾と見ることもできるが、同時に「非軍事」で解決を模索する日本としては、米国がイスラム国をさらに刺激して、結果的に同盟国日本の選択肢を狭め人質解放を難しくする可能性も考えねばなるまい。週明けには通常国会が始まる。安倍政権はかつてない困難な局面に立っていると言わざるをえない。(おわり)
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