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2015-01-21 00:00
2億ドルは、テロリストを勢いづけるだけだ
杉浦 正章
政治評論家
何でこの時期に中東歴訪かと悪い予感がしていたが、胸騒ぎが的中した。首相・安倍晋三に真っ向からテロリストが立ちはだかった。狂気の処刑人によると「日本の首相は欧米による十字軍の戦いに参戦した」というのだ。難民救済のための人道援助2億ドルと同額(240億円)を、2人の日本人人質のために支払えと要求している。国連の分析によるとイスラム国は身代金と石油の密輸で命脈を保っており、身代金は年間で50億円前後だという。それが濡れ手に粟の5倍の額の要求だ。安倍が「人命第一に考える」というのは間違っていないが、問題は240億円を72時間以内に支払うかどうかに絞られる。筆者は「テロリストにはびた一文支払うべきではない」と考える。そこで思い起こすのは1977年の日航機ハイジャック事件で、日本赤軍から福田赳夫が全く同じ脅迫を受けた例だ。身代金600万ドルの支払いと、獄中メンバーの釈放を要求され、福田は超法規的措置として「一人の生命は地球より重い」と述べて、テロリストに屈した。世界の世論は賛否両論が巻き起こったが、総じて米欧のマスコミからは日本政府の弱腰ぶりが批判の対象となった。日本の首相としては多数の人質の命がかかった問題であり、やむを得なかった対応であると思う。
しかし、今回の場合は状況が全く異なる。世界中がテロリストとの戦いのまっただ中にある。フランスの新聞社襲撃事件から2週間、世界の世論は一致してテロ撲滅の戦いを支持している。イスラム国の処刑人は日本政府と国民を分断しようとしているかのように見える。「日本国民は政府にプレッシャーをかけ、2億ドル払って国民の命を救うように賢明な判断を求めよ」と主張したのだ。一見見事な策略のように見えるが、しょせんはラッパーの淺知恵にすぎない。日本人の根性をを見くびっている。アメリカを相手に4年間戦った国民だ。最後は特攻まで行っている。テロリスト如きに甘く見られる民族ではない。「なめるな」と言いたい。日本国中が卑怯極まりない行為に激怒しているのであり、安倍の「人命を盾にとって脅迫することは許しがたいテロ行為であり、強い憤りを覚える」という発言は全国民が支持しているのだ。
身代金を公に要求したのは初めてであるが、これはイスラム国の弱体化を如実に証明している。まず資金面だが、イスラム国の財政は身代金と石油の密輸でなり立っている。しかし原油価格の暴落と米軍の爆撃で密輸ルートの資金は減少の一途をたどっており、残るは人質の身代金だ。2人の身代金を240億円とふっかけたのは、こうした資金難を一挙に解決する目的がある。身代金を安倍の支援額に合わせたのは、感情的な側面が強く、根拠は全くない。まさか満額とれると思ってはいないだろうと思われる。一方でアメリカの空爆も繰り返されており、当初は高揚していた外人部隊の志気も落ちる一方だと言われている。
逆に2億ドルがイスラム国の手に渡ればどうなるかだが、相手はテロリストだ。ますます勢いづき、周辺諸国の人命が何千人と失われる資金源となるのである。難民は増大する一方であろう。日本はイスラム国が活況を呈する資金を提供することになり、テロとの戦いに結束しようとしている国際社会の非難を受けることは目に見えている。いったん日本が弱みを見せれば、次々に人質事件を巻き起こし、日本を資金源化するだろう。官房長官・菅義偉が「テロとの戦いに貢献する我が国の立場に変わりはない」と言明しているのは、当然であり、この方針を堅持すべきだ。フランスやスペインが人質釈放に身代金を支払ったと言われているが、今度の場合はけたが違うのだ。米国はテロリストとは交渉しないことを前提としており、イギリスも歩調を合わせている。それに安倍が提示した援助額2億ドルは、難民や避難民に対する人道支援であり、直接的な軍事援助とは全く異なる。人道支援は主義主張が異なってもイスラム世界全体が潤うものであり、十字軍に参画したというのは全くの筋違いだ。人質の2人が現地にいたというのは、当然自己責任もあるが、人命は尊い。政府としてはできる限りの救出策を試みるべきであることは言うまでもない。ただ身勝手で許しがたい蛮行に屈してはならない。
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