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2014-12-16 00:00
(連載2)やはり「何のための選挙」だったのか
中村 仁
元全国紙記者
言葉でいえば簡単でしょう。実際はそうはいきません。議会で圧倒的多数をえても、それをバックに圧勝できる課題は少ないのです。沖縄の小選挙区(4議席)で自民は全敗しました。地元の強硬な反対の中で基地移転をどう進めるのかです。原発の再稼動はいくつかは進んでも、地元の反対が強い地域のほうが多いでしょう。国会での圧倒的多数は、国政を地域問題に落していけばいくほど、少数派になり、身動きがとれなくなってしまいます。国政と地域のねじれをどうするか。
安倍政権は、まずデフレ脱却にこぎつけ、国民に実利を与えて支持を取り付け、日本を強靭にする最終目標に向う戦術をとっていると、わたしは考えます。経済再生と政治的課題は2人3脚なのです。そのことは、デフレ脱却につまづけば、政権が考える最終目標の実現にたどりつけなくなる弱点を内包しています。過剰マネーが暴れまわる国際金融市場は、国会でいくら圧倒的多数を占めていても、それだけでは制御できません。過剰マネーの反乱(バブル崩壊)を恐れて、あるいはデフレ脱却につなげようとして、あるいは株価を上げようとして、異次元緩和が行われています。そのことが過剰マネーの拡大を招くという自己矛盾に日本も、はまり込みました。
黒田日銀総裁は、消費増税への政府支援として、10月の金融追加緩和を決断したと、思われます。安倍政権の増税・財政再建の先送り戦術、成長戦略の停滞をみて、このままでは日銀にだけツケが回ってくると、警戒し始めているようですね。よほどのことがない限り、次の追加緩和はしないでしょう。日銀にとっては、国際金融市場が最重要の相手です。国会における圧倒的多数の自公勢力とは、それこそ「異次元の世界に日銀はいる」との姿勢をとりだすでしょう。
アベノミクス(経済政策)では、「2年で2%の消費者物価の上昇」を目標にしています。それが相当に難しくなってきたというのが最近の観測です。この後、どうするのか。日銀は簡単には追加緩和に応じないでしょう。目標達成に向け、他に手段がありますか。逆に目標が達成されたらどうなるのでしょうか。2%インフレが4、5年も続いたら、累計で10%の上昇です。そんな物価が上がったら、低所得の人は生活が苦しくなります。金融資産も10%、目減りします。1,000万円につき100万円です。困りますね。国の債務(国債)の発行残高は約1,000兆円ですから、実質で100兆円の債務削減を増税なしにできるのです。財務省は喜ぶでしょう。ようするにインフレ税です。そうした本質的な意味を安倍政権は示していません。それは、日本にとって避けて通れない道なのかもしれません。長期政権は、そうした痛みの実態を国民に訴えていくことにもあると思います。(おわり)
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