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2014-12-12 00:00
自民圧勝で改憲の「関ヶ原」は参院選に
杉浦 正章
政治評論家
3分の2という数字を目の辺りにして、首相・安倍晋三が構想するのは何だろうか。紛れもなく憲法改正手続きへのフリーパスだ。前回衆院選も小泉郵政解散の時も与党合計は3分の2を越えているが、今回は与党で3分の2の317議席を大幅に超える可能性がでており、場合によっては自民党単独で317議席に迫る勢いもある。安倍の争点をアベノミクスに一本化する戦略が見事図に当たったことになる。持論の改憲志向は封印したのが功を奏したことになる。しかし安倍の究極の政治目標は改憲であることはいささかも揺らいではいまい。来年の通常国会はその序盤戦の感じを出すだけにとどめるだろうが、最終的には再来年の参院選を改憲関ヶ原と位置づける可能性が高い。改憲の手続きはまず発議が衆参それぞれ3分の2の多数で行われ、国民投票にかけて有効投票の過半数で決まる段取りだ。今回の選挙で自民党は徹底的に「改憲寝たふり選挙」を押し通した。前回は公約に「国防軍」の設置など改憲草案を前面に出したが、今回は公約の政策集の末尾で「憲法改正を目指す」と触れただけ。安倍の発言も「残念ながらまだ憲法改正の気運は国民の間で盛り上がっていない。国会で3分の2の多数を形成するのは簡単ではない」と抑制気味であり、あえて争点化を避ける意図が感じられた。
そして「この道しかない」とアベノミクスを前面に押し出して、争点を景気に絞った。この結果与党の3分の2が確実視されるに至ったのだ。加えて衆院で自民党が300議席を上回る方向であることは改憲に向けての大きなメルクマールとなる。選択肢が増えるのだ。安倍は改憲戦略について「3分の2の多数を形成できるものからやっていくのが現実的」と述べている。これは国論が2分する「9条」は後回しにして、政党間の合意が出来る項目から発議して国民投票にかけるという、いわば「対護憲アリの一穴」方式である。改憲アレルギーを除去したうえで本丸の9条を攻める作戦だ。例えば公明党とは同党の主張する「環境権、地方自治の拡充、自衛のための必要最小限度の実力組織としての自衛隊の存在の明記」などで組む。組むのは何も公明党だけでなくてもよい。維新の党や場合によっては次世代の党と組むこともあり得る。また一朝有事の際や東京直下型地震など大災害時に対応する緊急事態条項などの先行も検討されている。内閣に法律と同じ効果を持つ政令の制定を認める条項だ。
300議席超は極めて選択肢が増える流れができ得るということだ。こうして再来年の参院選挙に向けて、与党内および他党との「下地作り」を進めるのだ。そして参院選で与党3分の2か与野党3分の2の勢力を獲得して、改憲を発議する。自民党内にはうまく事が運んで参院選前に3分の2が形成されるものがあれば、参院選の前に憲法改正案を発議し、参院選と合わせて国民投票にかけるというドラスチックな構想もささやかれている。しかし現状における参院の議席は、合意が出来そうな自民114,公明20、維新11,次世代7で、合計しても152議席であり3分の2の162議席に届かない状況だ。難しい構想ではある。唯一民主党を分断出来れば可能になる。
ただ来年の通常国会においては改憲問題は「論議」にとどまることが予想される。予算案は与党の圧倒的多数の中でおそらく年度内に成立する運びとなろう。そして4月の統一地方選挙以降は、集団的自衛権の行使容認に向けての法整備が行われる。今のところ一本化した法案が出される方向にはなく、自衛隊法の改正を軸に関連法案が多数出されることが予想され、この処理に政権は忙殺されることになる。またアベノミクスも成否をかけた正念場となる方向であり、改憲が動き出すとすれば通常国会以降となるだろう。これに絡んで、再来年の参院選で一挙に与党が3分の2を獲得する方法がもう一つ永田町玄人筋の間でささやかれている。それは衆院とのダブル選挙だ。嫌がる公明党を説得出来れば、相乗効果で衆参3分の2も夢ではない。まだ衆院は任期が1年半しかたっていない段階だが、今回の「急襲解散」を編み出した安倍のことだ、何をするか分からないと見ておいた方がよい。
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