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2014-11-26 00:00
(連載2)「安倍政治」を総括する総選挙に
尾形 宣夫
ジャーナリスト
だが、首相が考えているのは、このOB氏が言うような大義ではない。繰り返しになるが、「アベノミクス」そのものである。増税を好む国民はいないが、「やむを得ない」と考える前提は、よく言われるように政治が自ら身を切る痛みを示すことである。何に使ったか分からないような政治資金、国民の税金からねん出される政党交付金を議員歳費と思い込んで使ってしまう感覚、議員定数削減など、いずれを見ても身を切る努力、政治浄化の覚悟がない。政権幹部が「念のため解散」だとか「これしかない解散」などと軽口をたたくような解散だから、民意などはどこ吹く風なのだろう。衆院議長が解散詔書を読み上げる衆院本会議場の「万歳のやり直し」などは前代未聞だし、国政のしきたりもわきまえない未熟な議員が議席を有していることだ。
「地球儀を俯瞰(ふかん)する」外交で首相は積極的平和主義を語り、世界景気にアベノミクスを売り込んだ。ともすれば、国内論議に先行した「国際公約」で内政を引っ張った。総選挙で2年の安倍政治が問われるのは当然だが、政権側からアベノミクスの成否のほかに私たちが直面する大きな問題についての言葉が聞こえてこない。来月14日の投開票の前に、例の、何が特定秘密なのかも分からない特定秘密保護法が施行される。原発再稼働は鹿児島・川内原発を皮切りに次々と始まりそうな気配だ。集団的自衛権行使の関連法案作成作業も急ピッチで進められる。普天間飛行場の辺野古移設計画を巡る沖縄県の民意を無視続けるのか。政権が問われる問題は、あまりにも多い。アベノミクスだけが争点なのではないのである。
先日、朝日新聞の「朝日川柳」に「国民にアベノリクツを無理強いし」とあった。投稿者の皮肉に脱帽である。アベノミクスの3本の矢のうち金融、財政政策の2本の矢は大胆に展開されているが、3本目の成長戦略が思うようにいかないことはGDPの不振で明らかになった。川柳が言う「リクツ」はアベノミクスの悪いところに目をつぶり、「いいとこ取り」をしているという意味だ。首相は解散会見でアベノミクスの〝成果〟を滔々(とうとう)と述べ、「景気回復、この道しかありません」と語った。大胆な金融政策、機動的な財政運営で株価は急上昇、円安も進んでアベノミクスが想定した景気の好循環は大企業、大都市部で実現した。だが、4月の消費増税で冷えた個人消費は一向に回復しないし、首相が演出した官製春闘で久しぶりの賃上げは実現したが、せっかくの賃上げも急激な円安による輸入物資の高騰で帳消し、国民は生活のやり繰りに汲々としているのが現実だ。地方はさびれ、小泉政権当時の大都市と地方の格差拡大が今また再現している。首相が自慢する有効求人倍率の改善も、実態は非正規雇用の増加が支えている。首相は「企業が収益を伸ばせば雇用も増え、賃金も上げることができる。この好循環を回すのがアベノミクスだ」と言うが、景気好循環のカンフル剤が切れたときの症状を心配しないわけにはいかない。
異次元の金融緩和のリスクはどうなのか。日銀が買い入れる国債の量は増え続け、日銀が事実上国の借金を肩代わりしているに等しい。マーケットが日本の先行きに不安を感じて信認を下げ国債売り、円売りを誘発するようだと日本経済の土台が揺らぐことも想定しなければならない。(つづく)
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