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2006-12-26 00:00
元慰安婦の「償い事業」と「アジア女性基金」
西川 恵
ジャーナリスト
元慰安婦の「償い事業」に取り組んできた「アジア女性基金」(村山富市理事長)が2007年3月末で解散する。この12年間、韓国、フィリピン、オランダ、台湾の元慰安婦の女性計364人に「償い金」を支給し、医療・福祉支援を行ってきた。「償い金」は国民の募金(5億6500万円)から、医療・福祉支援は政府拠出金(13億円)でまかない、元慰安婦1人1人に総理大臣のお詫びの手紙とともに手渡した。金額にして1人あたり500万円から320万円である。
残念ながら同基金の「償い事業」は、日本人の間でもあまり知られなかった。大きな理由は、同基金が発足時から元慰安婦を支援する市民運動に翻弄されてしまったからだ。これらの運動団体は「日本政府が法的責任を認めて国家による個人補償をすべき」との立場に固執し、当の元慰安婦が何を望んでいるかよりも、過度の倫理主義(「お金で許しを請うのか」「お金より尊厳の回復を」といった論理)に走った。このため事業の輪郭がぼやけ、国民が関心を失ってしまった。
ただ同基金が行った事業は正当に評価されるべきだろう。オランダでは元慰安婦と認定された79人のうち、受け取りを拒否したのは2人だけ。オランダの支援組織が「受け取るかどうかを決めるのは当事者の元慰安婦の女性であって、私たちではない」というプラグマティックな姿勢を貫いたことが、事業をそれなりに成功に導いた。アジア地域では元慰安婦287人が受け取ったが、同基金はアジアの国別の数字を発表してない。受け取ったと分かると、元慰安婦に圧力がかかるからだ。
したがって287人が元慰安婦の女性全体のどのくらいを占めるか不明だが、同基金の12年は、やろうとして出来たこと、出来なかったことを、腑分けして考える手がかりを与えてくれる。「日本は何もしていない」ということでは決してない。
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