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2014-10-28 00:00
バラスト水対策について
緒方林太郎
前衆議院議員
あまり注目されないネタですけど、先日、日本が「船舶バラスト水管理規制条約」というものに加入しました。今から10年前くらいに、私が船舶テロ関係の条約交渉でロンドンのIMO(国際海事機関)に出張していた際、同じくIMOで盛り上がっていた条約でして、「ああ、遂に日本も入ったか」と感慨深いものがあります。「バラスト水」と言って知っている方は少ないと思います。何のことかと言うと、船舶が貨物を積んでいない時に重石として載せる海水のことです。貨物を積んでいないと船体が軽くなり船舶が不安定になるため海水を積むのです。これが何が問題かと言うと、生態系に悪影響を及ぼすおそれがあるという事なのです。
大きな船舶になると、相当大量の海水を長距離に亘って運ぶことになります。それを貨物を積む際にドバーッと海に放出するのですが、全く生態系の異なるところに、出発地の海に生息する動植物が放出されてしまうことから問題視されています。いわゆる「外来種」の問題と捉えてもらっていいと思います。今回、条約に加入し、国内法でバラスト水を管理、規制していくための体制が整いました。 日本は海運国家ですし、外来種の問題が大きくなってきているので、出来るだけこういう条約を広めていく方向で頑張るべきだと思います。今回、日本が踏み切った理由としては、そろそろ条約が発効しそうなので(発効条件は30か国以上、世界の商船船腹量の35%の加入で、現在38か国30%強が加入。)、ここで加入しておかないとバラスト水関係で日本の船舶が外国の港で不利益を被る恐れがあるという判断があるのだと思います。
世界の商船船腹量の上位10か国は、パナマ、リベリア、マーシャル諸島、香港、シンガポール、バハマ、マルタ、ギリシャ、中国、英国です。日本は13位です。そして、この中で加入手続きを終えているのは、リベリア、マーシャル諸島と日本だけです。世界全体の20%くらいの商船船腹量を有するパナマが入るだけですぐに発効しますし、上位10位の国が全部入れば75%くらいまで行くのです。難しいのは便宜置籍船国が多いということです。やっぱりバラスト水対策を講ずるのは、お金がかかります。日本だって簡単ではありません。対策を講じた国とそうでない国との間で、海運会社の国際競争力に大きく影響することは間違いありません。単に名前貸ししているだけの便宜置籍船国に実効性ある対応を求めるのが難しいということがあるでしょうが、だからといって、環境の観点、国際競争力の観点から放っておいていいわけではありません。
今回、日本は加入に踏み切ったわけですから、今後は外交の場でバラスト水管理規制条約の未加入国に対してしつこく「入れ、入れ」と言い続けることはとても大事です。少し目立たないテーマではありますが、日本の海運業界にとってはとても重要です。是非、根気強くやっていってほしいと思います。
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