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2014-10-17 00:00
(連載2)過剰マネーが相場を揺さぶる
中村 仁
元全国紙記者
もっとも仕掛けといっても、景気指標や国際情勢の動きに絡めて動きます。それを報道では、経済統計に直結させて、もっともらしい説明がなされるのです。一般の投資家は市場の本当の動きの情報が不足していますから、いつも出足が遅れ、機関投資家やファンドの後塵をかぶるのです。大手信託銀行の社長を務めたひとが、ある時、担当者に相場の先行きを聞いたところ「先行きとは、いつのことですか」と、逆に質問されました。「2、3か月先だよ」というと、「自分たちが勝負しているのはせいぜい2、3日先のことです」との返答でした。「以前は実体経済にのっとった実需で相場が形成されて、ゆったりとした動きで判断していた。そんな時代は終わったと気づき、社長から身を引こうと決断した」と回顧していました。
最近では、1秒間に1,000回も売買する高速取引が市場で相当なシェア(米国では7割)を占めています。統計的情報のもとに、独自のプログラムを組み込んで一瞬にサヤを稼ぐ手法です。あらたな動きを瞬時に自動的に処理してしまいますので、その場その場では、ひとの判断が入り込む余地はありません。世界の市場を動きまわるマネーの規模が巨大になり、マネーサプライ(通貨供給量)は70兆㌦を超えています。特に世界金融危機(リーマンショック、08年)以降に急カーブで増加しています。金融システムがマヒし、凍結してしまったので、主要国の政府、中央銀行主導の金融の超緩和で、集中豪雨のような勢いで、マネーが市場に供給されたのです。
実需の何倍、何十倍ものマネーは回収されないまま株、為替、商品市場になだれ込みました。相場が下落し、実体経済に悪影響を与えるとの判断から、回収されず、さらに「デフレから脱却」とのスローガンのもとに、日本では黒田総裁による異次元緩和がなされました。世界のマネー供給量は実体経済をはるかに上回っており、かつての「胴体(実体経済)がしっぽ(相場)を振り回す」時代から「しっぽが胴体を振り回す」という主従逆転の関係が定着してしまいました。
このところ、欧州の景気が芳しくなく、「ユーロ圏、デフレ懸念深く、量的緩和の観測」で、日本の超金融の続編をみているような状況です。他に打つ手がないので、金融緩和に頼らざるをえません。これがマネーの集中豪雨となって、それが世界の「マネー洪水」をさらに招くという悪循環から当分、離脱することはできそうにありません。金融緩和は、その時には、痛みを伴わないので、歯止めがかかりにくいのです。痛みがでてくるのは、マネー市場の反乱で実体経済が振り回される時です。バブルの生成、崩壊による経済混乱はそのひとつでしょう。財政再建や増税はその瞬間に痛みを国民は感じますので、政治は金融緩和の道を選択しがちです。それが今日の大きな矛盾を招いているのでしょう。(おわり)
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