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2014-10-10 00:00
(連載2)ノーベル賞雑感、日本は科学者を大切に
中村 仁
元全国紙記者
偉大な研究、業績に至ったのは、中村さんは「怒りがわたしの原動力」というので驚きました。独創的な研究を最後まであきらめない中村さんに対する冷ややかな周囲の目、元勤務先の企業の無理解、さらにその会社との訴訟など、「怒りに震えた」そうで、いつか見返してやるぞ、ということだったのでしょう。それでも故人となった社長と直談判し、「5秒間で研究許可がでた」といいますから、救う神もいたのです。天野さんは「赤崎さんが研究の先人」といい、赤崎さんとの師弟関係が偉業を生みました。大学院生のとき実験に成功し、きれいな結晶誕生という「ビギナーズ・ラック」(初心者に訪れた望外の幸運)をもたらしたと述べ、飾らず率直でした。その赤崎さんは幼少時代に父親が買ってきれくれた鉱物標本をみて「どうしてこんなに色が違うのだろう」と思い、その頃から鉱物が好きになったといいます。鉱物標本がノーベル賞への歩みの第一歩だったのですね。こどもの時に好奇心をかきたてることがいかに大切かを教えてくれます。こどもの頃からの科学教育のあり方の参考になります。
3人が歩んだ人生模様の違いに驚きます。こんな人物比較をしながら、日本が口先とは別に、いかに科学研究を優遇していないかを、今回の受賞ニュースは国際的に知らせてしまったことに気づきました。日本は資源に乏しく、製造業の国際競争力もあやしくなり、これからは科学技術をますます盛り立てなければなりません。
それなのに、優れた研究者を大切に扱っていないようですね。ノーベル賞の受賞者が会見で「怒りがわたしの原動力」といったようなことは、恐らく、これまで例がないでしょう。中村さんの発明の対価訴訟で、裁判所は日亜化学に200億円の支払いを命じたのに、8億円で和解しました。これで企業は助かったのに、米国の大学に移った中村さんを企業秘密の漏洩で訴えることまでしたといいます。国際的な恥さらしですよ。世界的頭脳を粗末に扱っています。
もうひとつ、天野さんがフランスで会見中に、「ごほうびに帰国の飛行機をビジネスクラスに格上げにしていい」と、大学から連絡がちょうど入り、そのシーンも放映されてしまいました。これには二度、驚きました。超一級の学者の海外出張にエコノミーを使わせているなんて、それはありません。しかも格上げするなら、ノーベル賞受賞の先生ですから、帰国はファーストクラスです。これもありません。国際的な恥さらしでした。3者3様の科学者の行き方には、これからの科学技術の振興の参考になる話が満載されていると思いました。(おわり)
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