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2014-10-07 00:00
(連載2)「イスラム国」空爆をめぐる自衛権の論点
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
そして、集団的自衛権の問題がある。イラク領内の空爆に関しては、イラクからの要請があるので、テロ組織が自衛権の対象となり得ることを認める以上、集団的自衛権の行使ということで、何の問題もない。シリアとの関係では、アサド政権は、確かにシリア領内のISIS拠点への空爆を要請してはいないが、少なくとも黙認している。
集団的自衛権行使の要件として、被攻撃国からの援護要請というのがあるが、これは、明示的なものではなく、黙示的なものであってもよい。アサド政権の対応は、後者に該当するようにも思われる。憶測を逞しくすれば、これまで、激しく敵対してきた米国とアサド政権は、互いに、あからさまに協力しているところを見せるわけにはいかないので、水面下で合意している可能性があり、そうであれば、シリアとの関係でも、集団的自衛権の行使が成立し得る。
国際法にも、いわゆる「法の欠缺」がある。国連憲章には、テロ組織のような非国家主体による重大な脅威への対処について、何も書いていない。「法の欠缺」といえば、サイバー攻撃などもそうであろう。2012年に出された「タリン・マニュアル」は、武力攻撃と同視し得るようなサイバー攻撃は自衛権の対象となり得る、と指摘している。テロ組織への自衛権行使の正当化と同じ論理である。9.11への対応、タリン・マニュアル、そして、今回の対ISIS軍事作戦も、「法の欠缺」を埋めるための国際的努力を示しており、国際法の動的側面をよく示している。
ちょうど、我が国は、今年7月に、集団的自衛権の限定的行使を容認する閣議決定をしたところだが、我が国の自衛権をめぐる論争は、如何にも硬直化している。本来、自衛権は、個別的・集団的を問わず、国際法上の権利であって、憲法で厳しく制約を与えるという性質のものではない。自衛権について、もっと、国際的実行に即した捉え方をしないと、サイバー・セキュリティなどで困難に直面することにもなるであろう。いささか煩雑になったが、ISISへの攻撃をめぐる国際法上の論点を概観してみたのは、そういう問題意識からである。(おわり)
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