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2014-10-06 00:00
(連載1)「イスラム国」空爆をめぐる自衛権の論点
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
6月に「イスラム国」の樹立を宣言した、テロ組織「イラク・シリア・イスラム国」(ISIS)を壊滅させるべく、米国および米国率いる有志連合が、9月から、イラク、シリア領内のISISの拠点に対する空爆を実施している。この作戦は、軍事的有効性の評価はさておき、自衛権行使に関する論点、国際的実行の面で、注目すべき点を含んでいる。
米国は、対ISIS軍事作戦を、自衛権の発動であると明確に位置付けている。テロ組織が自衛権の対象となり得るかには議論があるが、2001年の9・11同時多発テロを受けたアフガン戦争も自衛権の行使であるとされた。テロ組織のような非国家主体であっても、国家による武力攻撃と同視し得るような行為を実行すれば、自衛権の対象となるということである。そして、国連は、安保理決議をもって、その主張を認めた。今回の空爆については、サマンサ・パワー米国連大使は、9月23日に国連事務総長あてに提出した書簡において、国連憲章51条(自衛権の規定)に基づくものである、と述べている。これに対して、潘基文事務総長は理解を示した。したがって、今回の件は、非国家主体による武力攻撃と同視し得るような重大な行為は自衛権の対象となる、という解釈を一層定着させることになろう。
次に、テロ組織が自衛権の対象になるとして、その拠点を空爆することの可否が問われる。アフガン戦争の際は、アフガンのタリバン政権がアルカイダを支援したことが、正当化根拠とされた。国際司法裁判所の1986年のニカラグア事件本案判決は、ある国家が、1974年の「侵略の定義に関する決議」に該当する(要するに武力攻撃と同視し得るような)重大な武力行為を実行する集団等の派遣をしたり、あるいは実質的関与をすれば武力攻撃に該当するが、そうした行為への黙認や支援のみでは、武力攻撃には該当しないと判示している。9.11への対応は、この判決の趣旨に従ったものとは言えないが、先にも述べた通り、国連安保理は是としている。
この論点で、今回問題となるのは、シリア領内への空爆である。シリアは内戦状態にあるとはいえ、政権の座にあるのは、一応はアサドである。米国は、パワー国連大使の前出書簡において、「自国領土をテロ組織に使われることを防ぐことが出来ず、その意思もないときは、自衛権を行使し得る」と言っている。これに対して、ロシア、中国、イランなどは、アサドの許可なくシリア領内を空爆するのは国際法に違反する、と主張している。アサドはISISとは戦っており、決して支援などしていないから、反対説に理があるようにも見える。しかし、潘基文事務総長は、空爆がアサド政権に事前に知らされていたこと、アサド政権の実効支配が及んでいない場所で行われていることを指摘し、米側の通告に理解を示した。これは、テロ組織の拠点への攻撃に関する基準となり得る。(つづく)
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