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2014-09-24 00:00
読売の政局「誤報」も問題だ
杉浦 正章
政治評論家
慰安婦強制連行をめぐる朝日新聞の誤報には、意図的に国を貶める長期的なはかりごとがあって、これはそう簡単に許せるものではない。他方で、その朝日に対抗して意気軒昂の読売のセンセーショナリズムはどうか。自分の欠陥は他人にしか分からないところがあるから、あえて頂門の一針を下せば、読売は政局記事の勇み足というか、誤判断が多すぎる。「小渕優子幹事長」の誤報などは氷山の一角だ。約50年に渡って新聞記事を精読・分析してきた筆者からみると、最近の読売は政局判断では朝日に負けている。読売が朝日の誤報で発行部数を伸ばそうとするのは自由だが、将来この誤報体質が国にダメージを及ぼさないとは限らない。自らの報道ぶりを顧みて、読売は朝日の誤報を「以(も)って他山の石」とすべきである。朝日の長期的、意図的な誤報に比べて、読売のそれは勇み足的であって訂正すれば許せる。どう見ても無理筋の「小渕幹事長」の報道を8月31日の朝刊一面トップでやって、すぐに「谷垣幹事長」が実現して、誤報と判明したが、後がいけない。[スキャナー]で「幻の小渕幹事長」と見出しを取り、いかに「小渕幹事長」の情報が本物であったかをるる釈明している。政局記事というのは、いったん見出しで踏み切ったら、言い訳は効かない。あっさり間違いを認めて「後講釈」をしないことが、政治部記者の鉄則だ。とりわけ一面トップに見出しを取った原稿は社運をかけるほどの自信を持ったものであるはずだ。それを後講釈でごまかしてはいけない。
しかも、お家柄か訂正記事がまるでなっていない。スキャナーの最後で政局取材班による事実上の訂正を掲載している。その全文は「読売新聞政治部は、内閣改造・自民党役員人事に向け、約1か月間にわたり、最大で30人の記者による取材態勢を組んだ。人事に関わる自民党や首相官邸などの取材対象者に日夜、接触を重ね、総合的な判断の下に報道した。『小渕幹事長で調整』のほか、大島理森・前党副総裁の入閣、高市総務相の経産相での起用の見通し記事を掲載し、結果的に読者に誤った印象を与えた。日々流動する政局に際しては、多角的な取材と慎重な判断により、今後とも正確で迅速な報道に努める」というものだ。読めば分かるように、大きな人事を3本も間違ったのに、全然反省していないし、おわびの言葉もない。「日夜接触を重ね総合的判断の下に報道した」にしては、結果がお粗末すぎる。「今後とも正確で迅速な報道」の「今後とも」の後は「誤報のないように努力をします」と続くべきところだ。誤報をしておきながら、読者に威張っている様な印象を与える文章を初めて見た。
はっきり言って最近の読売は政局原稿に弱い。前回の民主党代表選では「細野豪志立候補」を決め打ちして、「細野不出馬」の朝日に大敗北。自民党総裁選では、「石原伸晃優勢」一辺倒で、これまた大間違いだ。昔の読売は政局に強かった。佐藤政権時代ある晩夜回りで読売の記者から聞いたが「今晩はデスクが、トップがないからトップを書いたものには、これやる」と、デスクの上に1万円おいて、「さあさあ誰が取る」とやっていたそうだ。当時の1万円は今の5万円くらいの価値があって、筆者などはうらやましかったものだ。その効果があるとは言わないが、結構立派な政局原稿が出ていた。精読していると、朝日の政局原稿は、蒙古来襲で言えば集団戦法で書かれていることが分かる。読売の政局原稿は、これに鎌倉武士が「やあやあ我こそは」と単騎で臨んで討ち取られるようなケースが多い。朝日は一つの記事の中に特ダネ的な情報が数多くちりばめられているが、読売は最初に見出しありのケースが多いような気がする。だから、朝日の政局記事にはこくがあるが、読売のそれはスカスカだ。つまり朝日は多数の記者が自分の持っている最上の情報を全て「書き屋」に出して、それを統合して書いているような気がする。
読売も朝日も夜討ち朝駆けは十分すぎるほどやって情報は豊富に違いないが、読売に欠けるのは記者が情報を出し惜しみしているかのように見えることだ。こう見てくると政治原稿に関する限り、先にも書いたが、朝日が10とすると、読売は7のレベルだ。読売が5のレベルの時すらある。ましてや他社は朝日には遠く及ばないケースが多い。だから政治家や霞が関の官僚の多くが、朝日の原発、秘密保護法、集団的自衛権などの「偏向報道」に舌打ちしながらも、毎朝朝日を最初に読むのである。読売も産経も朝日の慰安婦強制連行取り消し記事をチャンスとばかりに、販売が攻勢を仕掛けている。自社の購読を勧誘するチラシを大量に配布している。これにジャーナリスト・池上彰が苦言を呈しているが、報道機関といえども企業だ。欠陥商品を出した企業にライバル企業がネガティブ・キャンペーンをするのは当然だ。受信料が自動的に入ってくるNHK的な発想で、きれい事を言っても説得力がない。しかし朝日も読売も誤報は意図するしないにかかわらず、読者迷惑であることを肝に銘ずるべきである。
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