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2014-09-08 00:00
世界にまん延の慰安婦「誤報」をどう洗浄するか
杉浦 正章
政治評論家
従軍慰安婦強制連行で朝日新聞が世界中にばらまいた「誤報の汚染」を如何に洗浄・消毒するかは気の遠くなるような時間とエネルギーを必要としそうだ。官房長官・菅義偉が国際社会への誤解解消に取り組む姿勢を鮮明にさせたのは極めて重要な一歩であろう。朝日は自ら責任を取ろうとしないばかりか、誤報の取り消しを世界的に発信しようともしない。ことは日本という国の名誉と国益がかかっている問題であり、政府・与党は予算上の措置はもちろんのこと、政治家もことを外交官だけに任せず、積極的に海外向けに発言、一体となって政策広報に乗り出すべきだ。1982年から自称文筆家・吉田清治の「済州島で慰安婦狩りをした」とする生々しいねつ造記事を真に受けて、朝日は繰り返し16回にわたって誤報を続けた。この間の報道が韓国の反日世論を燃え立たせ、「強制連行」があったかのように読める河野談話が発せられた。また河野が記者会見で強制連行を認める発言をしたことも、火に油を注いだ。この結果、日本軍が多くの慰安婦を「性奴隷」として「強制連行」したという誤解が国際社会に広がったのだ。
中韓両国の「意図的な誤解」を別にすれば、国際社会への影響を分析すると大きく分けて国連の誤解、世界の言論機関の誤解、米政府の誤解の3つに分けられる。一番甚だしいのが国連の誤解である。まず中立でなければ国連憲章違反となる事務総長・潘基文 (パン・ギムン)が対日批判発言をしていることだ。1913年に母国の韓国で慰安婦問題について「日本政府や政治指導者らは、とても深くみずからを省みて、国際的で未来志向のビジョンを持つことが必要だ」と発言、日本政府を批判して、韓国マスコミの喝采を受けた。藩が巧妙なのは、狂ったように慰安婦問題で対日批判を展開するナバネセム・ピレイ(南ア)を、自分はなるべく表面に出ず、人事権を使って、人権高等弁務官に任命したことだ。ピレイは8月6日に「性奴隷」との言葉を繰り返し使用しながら、いわゆる従軍慰安婦問題に関して声明を出し、「日本は戦時中の性奴隷の問題について、包括的、公平で永久的な解決に向けた取り組みを怠っている」として、「深い遺憾」を表明した。これに対して菅が「性奴隷の表現は極めて遺憾」としたのは当然である。これに先立ち国連は1996年、国連人権委員会がクマラスワミ報告で従軍慰安婦を「強制連行された軍用性奴隷」と断定、これが国連で権威を持って語られ、日本は事実上手を拱いていたのだ。菅は、同報告について、「朝日新聞が取り消した記事に影響を受けた。国際社会に誤解が生じており、政府の立場、取り組みをこれまで以上にしっかり説明したい」と発言している。
かつて筆者はニューヨーク特派員として国連を担当したことがあるが、日本の発進力は正直言って弱い。日本は国連分担金が現在2億7000万ドルで、アメリカに次ぐ2位。5位の中国の倍である。ロシアは11位、韓国13位にもかかわらず、ロビー工作の活発さは日本の比ではない。金だけ出して過去の歴代政権は反論らしい反論をしてこなかった。やはり朝日の誤報が誤報として確立していなかったことが大きな原因だろう。安倍政権は安倍にばかり外交上の重責がかかっているが、ここは政治家が乗り出すべき時だ。安倍はまず9月の国連総会で藩と会談し、慰安婦問題での中立を要求すると共に、一方的な主張で国連憲章を踏みにじっているかに見えるピレイを更迭させ、朝日の誤報を反映させた新たな報告書を起草させるべきである。また総会における基調演説でじゅんじゅんと誤解を解くべきであろう。米マスコミ対策も不可欠だ。安倍はかつて2007年に「いわば『慰安婦狩り』のような強制連行的なものがあったと証明する証言はない」と国会で答弁した。ところが米世論が一斉に反発、ニューヨーク・タイムズは、「日本は真実をねじ曲げ、名誉を汚している」と批判し、被害者への公式な補償金の支払いを求めた。ロサンゼルス・タイムズは「首相の発言によって被害者は更なる苦しみを味わった」とし、日本政府は生存者に対する補償を「道義的にも法的にも果たす義務がある」と主張した。
対策は駐米大使が有力紙を呼んで「慰安婦レクチャー」をすることでも効き目がある。強制連行は誤報という新事態を詳細に説明して、理解を求めるのだ。安倍が訪米の際、かつて中曽根康弘が行ったように主要紙の社主と会食して、理解を求めるのも手だ。肝心の米政府も慰安婦問題への思い込みが強い。大使館が朝日の誤報を英語の文書に訳して、解釈も加えて国務省首脳に手渡し、説明することも必要だ。問題は国務省報道官レベルだけでなく、大統領オバマまでが発言していることだ。オバマは訪日後韓国で「従軍慰安婦問題は実に甚だしい人権侵害だ。被害者の声を聞くべきだ」と明言。歴史問題で韓国の立場に一定の理解を示した。まるで安倍と握手した後、後ろ足で蹴飛ばしたかのような発言だ。首脳会談の際にオバマに改めて強制連行の虚偽性を説明しておく必要がある。要するに、日本は戦争という異常事態において欧米諸国が行ったのと同様の慰安婦現地調達を行っただけであり、ソ連のスターリンがレイプを奨励したような非道の国策を推進した事実はない。慰安婦問題を平時の道義で論じても問題解決にならないことを訴えるべきだ。自民党が河野談話とは別次元の「新談話」を発出すべきとしているのは全く正当である。
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