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2014-08-06 00:00
日本の対ロシア制裁はだれからも評価されない愚策
緒方林太郎
前衆議院議員
マレーシア航空機撃墜等に関して、対ロシア制裁が新たに発表されました。まず、最初に言っておきますが、マレーシア航空機撃墜、その実行犯であろう親露派は、私は非難すべきだと思います。4月に「ウクライナの主権と領土の一体性の侵害に関与したと判断される計23名」への査証発給停止が発表されていましたが、今回、それに加え、クリミア自治共和国及びセヴァストーポリ特別市のロシア連邦への「併合」又はウクライナ東部の不安定化に直接関与していると判断される者として我が国が指定する40個人及び2団体に対する資産凍結等です。簡単に言うと、誰も切られる人がいない空振りの制裁です。何とか北方領土交渉に影響が出ないように、一見「資産凍結」といったお題目として大きそうに見えるけども、その実、生身を切るような部分はゼロというところに苦心して仕立て上げたということだと思います。
私、昔外務省で、タリバーン制裁を担当していたことがありまして、ともかく苦労しました。イスラム圏の方の名前は似通っていること、アラビア語の名前はアルファベット表記に複数の可能性があって、一つ違うと漏れてしまうこと等、色々な苦労がありました。前者については、制裁を発動したら、千葉にお住まいのパキスタン人の方が同名で引っかかってしまったらしく、とある銀行から「激昂したパキスタン人の方が窓口におられるのですが...。」と電話があり、財務省に繋いだ記憶があります。後者については、「ムハンマド」という名前だと「Muhamad」「Mohammed」等、少なくともバラエティが相当数あって大変なのです。幾つか並べて「この中のどれかのはず」という指定の仕方では、銀行実務が混乱するのです。
そんな余談はともかくとして、今回、意図的に「空振り」をしているのであれば、一番重要なのは「空振りなんですよ」ということを正しくロシア側に伝えることです。しかし、ロシア側の反応を見ていると、日本の制裁を批判しています。しかも、「非友好的で近視眼的」とかなり強い非難声明です。折角、制裁強化を打ち出している欧米との関係で「弱腰」と言われるリスクを取って「空振り」したのに、それがロシアから「非友好的で近視眼的」と言われているのは、正しく意図が伝わっていないのではないかと思うわけです。コミュニケーションのルートが目詰まりを起こしているのであれば、日本の「空振り」は誰からも評価されない愚策であったということになります。
なお、私はマレーシア航空機撃墜事件は非難すべきものだと思いますし、それに対するロシアの親露派への支援も事実だと思います。ロシアは非難すべき対象だと思います。しかし、日本政府として、それをあえて押し切って「空振り」をするという決断をした以上は、それを正しく使いきれていないとすれば、外交上、何の得もないではないかと思います。
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