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2014-07-31 00:00
マラバール演習を機に、日印安保協力の次元を高めよ
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
7月24日から30日にかけて、米印合同軍事演習「マラバール演習」が、日本近海の太平洋上で日本をゲストとして迎えて、実施された。マラバール演習に日本が招待されたのは、2007年、2009年に続き3回目であり、今回は、実施海域が日本近海であったこともあり、事実上、日米印3国合同軍事演習となった。アジア太平洋の三大民主国家が、太平洋で合同軍事演習を行ったことの象徴的意義は極めて大きい。海洋における国際規範に基づく秩序を乱すような行動、すなわち、中国の威圧的で一方的な姿勢のようなものは認められない、というメッセージを発することができた。日印、日米印の安保協力を一層進展させる必要がある。ただ、マラバール演習は、救難、海賊対策、人道支援などでの共同対処能力の向上に主眼が置かれたものである。戦略的協力に次元を高めるには、こうした演習を繰り返すのは、もちろん必要ではあるが、十分ではない。
日印、日米印の安保協力推進には、インドの外交方針を理解し、尊重する必要がある。インドの外交政策は、冷戦時代を通じて、非同盟主義であった。非同盟といっても、実体は、親ソ連で、米国から距離を置くということであった。中国による脅威の高まりとともに、非同盟主義ではなく、東南アジア、日本、米国などをもっと重視する、ルック・イースト政策に変化しつつあるが、非同盟主義の残滓は今でも残っている。モディ新首相は、歴代インド首相の中で、日米との安保協力に最も理解がある人物であり、期待できるが、インドを対中封じ込めの一部にするという考えには与しないであろう。インドは、膨張主義的でも、攻撃的でもないが、誇り高き大国として、グローバルな政治に関与したいと考えている。それを、こちら側にとって害にならない限りにおいて尊重した上で、海洋安全保障の分野における協力を深化させることで、結果的に対中封じ込めにインドが役割を果たすことになる。インドを対中カードとして「利用する」ことが戦略的思考だと単純に考える傾向が一部に見受けられるが、それでは上手く行かない。
安保協力の次元を高めるには、利害関係、相互の必要性の認識を共有することが必要不可欠である。日印間で言えば、インド洋における海洋の安全保障が共通の利害である。しかし、相互の必要性については、まだ十分とは言えないであろう。特に、日本がインドに対して何をなし得るか、より積極的になる必要がある。やはり、鍵となるのは、インドへの武器技術供与であろう。インドは、インド洋に中国海軍が原潜を含む潜水艦を展開することを強く警戒している。今後、インドも潜水艦の隻数を拡大する見込みだが、隻数だけでなく、潜水艦戦における能力向上も重要である。それは、日本の得意分野である。具体的には、救難、掃海、対潜哨戒能力である。武器輸出禁止三原則が防衛装備移転三原則に改められたのであるから、こうした技術の供与につき、インドとよく協議し、実現させるべきである。もちろん、それ以外の必要な技術も供与すべきある。既に、海自の救難飛行艇US2が輸出される方針が決まっており、歓迎できる。
インド洋での海洋安全保障における協力の中核は、シーレーンの安全確保における協力である。先の、集団的自衛権行使容認の決定に際して検討された、8類型の中に、米軍とのシーレーンの合同パトロールがあったが、インド軍との合同パトロールも目標とすべきである。まず、それを念頭においた、合同演習の実施を模索することから始めてはどうかと思う。
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