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2014-07-28 00:00
(連載2)安倍政権に不都合な経済の長期停滞説
中村 仁
元全国紙記者
サマーズ氏の長期停滞論を要約すると、以下のようになります。
・米国経済は、リーマンショック直前の2007年に潜在的な成長軌道とされた水準を10%下回ったまま推移しているが、この低成長ですら、極端な金融緩和による実質マイナス金利でようやく実現できた。
・金融危機後、経済回復は遅れ、成長路線への復帰を果たしていない。潜在成長率は低下しており、それは金融危機の前からおきている。第二次世界大戦後の復興・高度成長ブームは1970年代に終わっており、先進国経済はおしなべて成熟化の傾向を示している。
・実物的な投資機会はすでに乏しく、低成長は不可避になっている。人口増加率の低下、イノベーション(技術革新)の一巡などが背景にある。
・米国経済は金融依存を強め、資産価格バブルを起すことで、その後も高成長を維持してきた。実体を欠いたかさ上げが限界に達した結果として、金融危機(リーマンショック)が発生した。それを契機に低成長の実体が露呈した。
・IT革命の進展によって、少ない人数で生産できるようになる一方、働き場を失った人々に新しい職場を提供できないでいる。新興国の企業、労働者の能力は高度化し、先進国の製品、技術が競争に負けだしている。
もっとも、対策がないわけではありません。サマーズ氏は「努力次第で脱却できる」と言っています。所得分配の不平等化による消費減退の是正、日本がやっている第三の矢である成長戦略(投資機会の創出)、女性の社会進出の促進、高齢者の働き場の創出などもありましょう。
要するに、黒田総裁が固執する異次元の金融緩和、心理学によるデフレ脱却という目先の話では解決できない構造的な問題が横たわっているということです。安倍政権がやっている資産バブルの創出、株価引き上げは、むしろ本質的な問題解決を先送りすることになりかねません。官僚から提出されるおびただしい数のプロジェクトを、十分な政策的手順の裏づけや実現可能性の詰めがないまま、速射砲のように右から左に、次々と打ち出し、新聞、テレビに報道させる手法もいかがなものでしょうか。
最後に、日本の経済学者は、いつものように、海外の権威ある学者の主張、学説に刺激を受けています。輸入学問、輸入学説なのですね。サマーズ氏の長期停滞説を、まず日本の経済学者から聞かせてもらいたかったと思っています。(おわり)
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