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2014-07-06 00:00
(連載2)安倍政権は幻想なき主体的な対露政策を
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
欧米諸国は、G7で唯一ソチ五輪開会式にトップが出席した日本について、本心では対露制裁は極力避けていると見ている。プーチンのクリミア併合宣言の翌日に(3月19日)東京で開かれた事実上官民一体の「日露投資フォーラム」等から、形式だけの制裁だと判断しているのだ。また、欧米が対露制裁の一環としてビザ発給を停止しているナルィシキン下院議長の訪日を、日本は6月2日に文化交流イベントで歓迎したことも無関係ではない。一方ロシア側は、日本の制裁は外からの圧力故だとして失望を表明し、「日本政府は日露関係の強化を謳いながら、言行不一致だ」として、対抗措置を仄めかしている(ロシア外務省代表)。わが国が敢えて受け入れたナルィシキン自身でさえ、「日本の制裁は遺憾だ」とし、「それがウクライナ正常化にとり何の役にたつのか」と批判した(「Газета Ru」6月3日)。ただ、日本政府の一部には、「ロシアは理解してくれている」との、楽観的な期待がある。たしかに、ロシアの今の国際的孤立から見て、日本を完全に突き放すのは得策ではないと見て、ロシアはある程度日本への「理解」も示す。しかし、日本が対露制裁を最小限に抑えたからといって、わが国に敬意を払っているわけではない。むしろそれを日本の弱さと見ている。ロシアには「現在の米露対立の中での敗者は日本」との専門家の見解さえある(F・ルキヤノフ)。
日本の対露政策が、難しいジレンマに直面していることは私も理解している。1面においては、日中、日韓、日朝関係が最悪の時、東アジアで孤立しないためにもロシアとしっかりとした協力関係と首脳間の信頼関係を構築する必要がある。この意味では、安倍首相の政策は間違いではない。しかし他面では、G7の中でロシアに主権と領土保全が侵されているのは、つまりウクライナの痛みを真に理解できるのは、日本だけだ。したがって、日本が今きちんとクリミア併合を批判しないで、誰がいつ批判するのか、という問題がある。この批判は、日本は他国に追随するのではなく、主権国家として自ら主体的に行うべきなのだ。これに真剣な態度で臨まないと、尖閣問題が将来は沖縄問題にまでエスカレートする。
結局ロシアに対しては、現実にはデリケートな外交となるが、次のようなメリハリの利いた政策をとらざるを得ない。つまり、大局的、戦略的には、あるいは長期的には、日本はロシアと良好な関係の構築を目指す。そこにはエネルギー面での協力や平和条約締結の努力も含まれる。このことは公式、非公式にあらゆるチャンネルを使ってしっかりと相手に理解させる。一方、個々のイシューに関しては当然ながら、批判すべきこと、反対すべきことは、他に追随してではなく、きちんと主体的に批判し、反対するということだ。
一つの具体例を示そう。ドイツとロシアの強い経済関係や良好な政治関係はよく知られている。しかしこのドイツでさえも、2012年に国会は人権問題で厳しいロシア批判決議を採択し、同年11月にメルケル首相が訪露してプーチンと首脳会談を行った時には、彼女はロシアの政策をストレートに批判した。その関連で、ソチ五輪開会式にも彼女は欠席した。問われているのは、主権国家として、「姑息」と蔑視されない主体的かつ真剣な対露政策である。わが国の政治家や外務省内には、残念ながらプーチンについて多くの幻想がある。しかし一方では、醒めた目でリアルにロシアを認識している人たちもいる。安倍政権は、これらの人たちをしっかりと見分けて、幻想を抱かず冷静な対露政策を遂行すべきである。(おわり)
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