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2014-06-23 00:00
(連載3)フェアプレイから遠いサッカー、子供は何を学んでしまうだろう
中村 仁
元全国紙記者
この判定に抗議が相次ぎました。「簡単に押し倒される選手ではない」、「他の審判ならPKの判定はなかった」、「審判の助けを借りて、ブラジルは勝った」。ひどい抗議は、試合に負けたクロアチアの監督が「こんなことでは、今大会は1000回ものペナルティー・キックが行われるぞ」とわめいていたことです。ルール違反をなくすには、厳しい判定をどしどしだして、結局、高いコストを払わせていけばいいのです。そうはしないのは、審判がジャッジを曖昧にして、違反を黙認し、それが試合を面白くしていると考えているからでしょう。もともと不正、違反が試合を盛り上げるという暗黙の了解があるのでしょう。
日本戦に触れますと、初戦のコートジボワール戦、次のギリシャ戦では、日本側を含め、手を使って、ボールに接近している相手選手の腕、袖を引っ張り、押しのけたり、倒したりしていました。足をだし、相手がつまづいて、倒れるシーンも多くありました。悪質の程度に応じて、イエローカード(2枚でレッドカードで出場停止)、ペナルティー・キックとかいろいろ差はつけてはいますがね。映像をみると、明らかに意図して違反をしているのに、指摘された選手は手を広げ「オーノー」のゼスチャーです。よくやりますよね。
野球ではどうでしょう。キャッチャーのミットが打者のバットに触れただけで打撃妨害をとられ、進塁が認められます。走塁妨害、ボークなども故意か偶然かを問わず、ペナルティーをとられます。高校野球の甲子園大会で、相手投手を疲れさそうと、ファウルを故意に何度も打つ選手の打法がバントの亜種とみなされ、スリーバント・アウト(バントで3回、ファウルを打つとアウト)と認定されました。練習を重ね、亜種打法に磨きをかけてきたその選手は、得意技を封じられ、号泣しました。厳しいのですね。
日本のサッカー選手はきまじめすぎる、つまりフェアプレーに徹する傾向が他国の選手に比べると強いと、いわれます。「選手を温室育ちにすると、激しい当たりが多い国際試合に勝てなくなる」という解説を読んだことがあります。きっとそうなのでしょう。最後にもうひとつ、現実の社会では、法律の網の目をくぐり、違反をしてでも、いかに相手をだますか、いかに裁判で重い罪から逃げおおせるかに達者な人が多いことは間違いありません。性悪説で成り立っている人間社会を生き抜くには、サッカーで訓練をつむのもいいのかもしれません。サッカーはそうしたことを暗黙の前提としているとすれば、社会的効用はないでもありませんね。(おわり)
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