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2006-11-27 00:00
APECの投げかける問題
村上正泰
日本国際フォーラム主任研究員
先ごろハノイで開催されたAPECにおいて、米国がAPEC全域によるFTA構想を提案したことにより、約10年振りにAPECという枠組みが脚光を浴びることになった。かつてAPECはアジア太平洋の地域協力の主役として注目を集めた時期もあったが、1997年に発生したアジア通貨危機を契機に、危機の予防や解決に何の役にも立たなかったとして、APECに対する期待が急速に低下し、代わってASEAN+3の枠組みの中で地域統合が語られるようになった。最近では、ASEAN+3かASEAN+6かといった議論も行われているが、APECについてはその後ほとんど正面から論じられてこなかった。こうした中で新たな流れを作り出そうとしたのが今回のAPECであり、本掲示板においてもすでに11月9日付で大河原良雄大使が投稿されておられるが、最大の問題はアジアの地域統合と米国との関係ということになる。
アジア通貨危機に際して、米国主導の形でIMFが採用した政策は危機の実態にそぐわず、むしろ危機を悪化させたことは否定できない。また、今後を展望しても、米国の巨額な経常収支赤字の調整リスクは大きく、アジアにおける過度のドル依存の是正が必要である。さらに言えば、米国には孤立主義もしくはユニラテラリズムという伝統があり、しばしば一方的な独善に走ってしまうという深刻な欠点がある。したがって、何でも無批判に米国に追従すればいいというものではないが、さりとて米国の存在をまったく無視できるものではないのも事実である。
大河原大使も指摘されているように、APECにおいては政治分野を含む幅広い分野の議論が行われるようになっている。今回のように北朝鮮問題が議論される際には、米国は不可欠な存在である。これは米国が圧倒的な力を持つ安全保障の領域に限った話ではなく、例えば我が国が最初にFTAを結んだシンガポールが米国ともFTAを締結したように、アジア域内で相互依存度を高めつつある経済分野においても、米国との関係が重要な意味を持つことに変わりはない。
米国がどこまで主導権を発揮するかは別としても、こうした現実を前にして、アジア諸国にとっては明らかな域外国である米国との関係を地域統合の動きの中でどのように位置づけていくかは、容易に答えを見出しがたい大きな難問である。たとえさまざまな枠組みが重層的に重なり合うとしても、アジア地域の国際関係において地域統合を担う中核的メンバーが定まらないという現実は、今後の秩序を構想していく上での大きな障害でもある。今回のAPECはそのことをいま一度我々に再認識させたと言えるのではないだろうか。
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