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2014-06-20 00:00
中韓、歴史認識で対日共闘再構築の公算
杉浦 正章
政治評論家
よほど「河野談話」の検証結果が気になるらしい。発表される6月20日に合わせて、竹島沖の日本領海内で韓国軍が海上射撃訓練である。日本政府の抗議など「無視した」(韓国政府関係者)上での異例の訓練だ。折から中国国家主席・習近平の訪韓が7月3日と決まった。アジアにおいて孤立化をひしひしと感じている習と韓国大統領・朴槿恵の会談は、地球俯瞰外交で成果を上げている首相・安倍晋三への、強いけん制を意味する。当然歴史認識での対日共闘路線を復活させるものになるに違いない。中国の国家主席が北朝鮮を訪問する前に韓国を訪問することは、極めて異例である。江沢民は党総書記就任後、胡錦濤氏は国家主席就任後に韓国より先に北朝鮮を訪れている。北朝鮮と中国の関係が冷え切っていることをうかがわせる。逆に北朝鮮は拉致被害者問題で日本への“すり寄り姿勢”を強めており、場合によっては安倍訪朝が実現する可能性も出てきている。習訪韓に次ぐ安倍訪中となれば、朝鮮半島をめぐって真逆の外交が展開されることになる。習は国内での一極集中体制をほぼ確立したと見られており、訪韓を皮切りに外交攻勢を強めるものとみられる。
すでに習は朴の要請に応じて、今年1月、黒竜江省ハルビン駅に伊藤博文元首相を暗殺した朝鮮独立運動家、安重根の記念館を設置。さらに、旧日本軍による従軍慰安婦に関する資料を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録申請するなど、歴史問題での韓国との「対日共闘」を進めようとしている。習にしてみれば、5月のシャングリラ会議が圧倒的に安倍と米国防長官・ヘーゲルのペースで進み、南シナ海と東シナ海における覇権確保の動きが東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の批判の的となったことから、何とか巻き返しを図りたいのだろう。その突破口を朴との会談と位置づけているに違いない。一方で朴槿恵は、米国の仲介による日米韓首脳会談を渋々行ったが、その後は海難事故で忙殺され、得意の対日けん制外交は封じ込められていた。しかし対日カードは、国内的に支持率確保の最良の手法であり、これを使うチャンスをうかがっているというのが実情だろう。そこに出てきたのが、20日に日本政府が衆院予算委に提出する河野談話検証結果である。旧日本軍の関与を認めた談話については、韓国側とすりあわせたうえで作成したとの噂が絶えなかった。そうであれば河野談話は日韓共作の色彩を帯びることになり、韓国側が同談話を根拠に対日批判を繰り返すことは自己矛盾となる。事実、核心部分の「軍の意向を受けた業者が慰安婦の募集をした」という表現は、韓国側の主張で「軍の要請を受けた」に強めたとされるのだ。
韓国では与野党を問わず固唾をのんでその内容を注視しているが、韓国最大野党・新政治民主連合共同代表らは19日、「検証発表は韓日関係の破局を招きかねない、極めて危険な政治的発想だ。河野談話を検証という名の下に韓国を傷つけようとしているのではないか」との強いけん制球を日本側に投げつけている。韓国政府が同日、20日9時からの射撃訓練を発表したのも、検証発表をその内容も含めてけん制していると言うことなのだろう。こうして朴槿恵は、暫く封印していた対日歴史認識を再度持ち出そうとしているかのように見える。しかしその外交路線は、極めて危ういものがある。つまり習近平の仕掛けた日米韓分断のわなに陥る危険があるのだ。習は5月の「アジア信頼醸成措置会議」で「アジアの安全は結局、アジアの人々が守らなければならない」と発言、米国の関与を排除する方針を鮮明にさせた。昨年6月の訪米でも「太平洋二分割論」をとなえて米国の同調を求めたが、オバマは逆にアジアでのリバランスを打ち出し、関与を一層強めようとしている。日米の主張は中国の海洋進出を食い止めることで完全に一致している。米国は、中国による防空識別権の敷設やベトナム沖での石油掘削強行、東シナ海における戦闘機の異常接近などの一連の覇権主義に強い嫌悪感を抱いている。当然韓国に対しても圧力をかけているに違いない。
アジア諸国も米国の軍事支援や、日本によるフィリピンやベトナムへの巡視艇供与を歓迎しており、中国の孤立化は歴然としている。これに対して習は、朴との会談を突破口と位置づけているに違いない。習は、まず歴史認識で対日共闘関係を再構築し、さらに出来れば安全保障分野での協力関係に持ち込みたいのであろう。これは朝鮮戦争での敵国同志が手を結ぶことを意味しており、米国の極東戦略がほころびることを物語る。朴は経済関係では中国との関係を良好に保ちたいのであろうが、いくら何でも米国を無視して安保関係にまで踏み込む度胸はあるまい。習との会談は、米国と中国という超大国のはざまで苦汁の対応を迫られる恐れがある。結局対日歴史認識で一致して共同歩調を維持するのが精一杯であろう。しかしシャングリラ会議で国際世論の動向は安倍の積極外交で「歴史認識」問題はかすみ、中国の海洋覇権だけが批判の対象となった。これが物語るのは、中国の孤立化であり、これに同調すれば韓国も孤立化をもたらすことになろう。
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