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2014-06-17 00:00
やはり公明にとっての政権は“蜜の味”
杉浦 正章
政治評論家
一見自公が真っ正面からぶつかっていたように見える関ヶ原の戦いは、集団的自衛権の行使容認の政府・自民党サイドの完勝が見えてきたようだ。限定容認の是非での大勝負はついて、あとは文言調整の“掃討作戦”が展開されているのが実態だ。それにしてもあれだけ神経質に吠えまくっていた公明党代表・山口那津男がここに来て「合意を目指す」と言い出したのはなぜだろうか。やはり極東情勢の激変は、現実を見ない「平和の党」の看板だけでは対処しきれないところまで来ていることがやっと分かったのだろう。政権与党の“蜜の味”を、他党に持っていかれそうな危機感も作用したに違いない。「蜜の味論」を如実に物語るものは、最近になって公明党幹部が「政権を離脱したら損するのはこっちの方だ」と述べたと言われることだ。まさに正直に“本音”を語っている。自民党は衆院では293議席の圧倒的多数を占めているが、過半数割れの参院でもみんなと維新両党を加えれば141議席に達する事が可能であり121の過半数をクリヤできる。
この図式が公明党の立場を弱いものとしているのだ。加えて選挙母体である創価学会も、一時は集団的自衛権の行使容認に反対する方針を打ち出したが、結局政教分離を指摘されて身動きできなくなった。これ以上国政に宗教団体が関与すれば、事態は思わぬ方向に飛び火する可能性があったのだ。さらに政権与党であればあるほど、国際環境激変の情報は生で伝わってくる。北朝鮮の原爆・ミサイル開発の現況が抜き差しならぬ段階にあることが分かる。中国の海洋覇権主義が一触即発の危機を伴うものであることも理解できるはずだ。「なぜ急ぐか」という主張をしにくい情報が眼前に展開されては、反論もしにくいのだ。公明党が邦人を載せた米艦への攻撃や機雷除去への対応を個別的自衛権や、警察権の行使で対処すべきと主張すること自体が、「危機感共有」の証左であろう。さらに、論戦に持ち込まれた場合、政府機関による解釈の方が、一政党の反論能力を越えるのは間違いない。自民党側はこの強みを背景に公明党を袋小路に追い込んでいった。公明党は論戦において負けを意識せざるを得なくなってきたのだ。
公明党からは自衛隊員の犠牲は覚悟してのことかという声が出されたというが、放置すればやがては国民の犠牲が発生する場面において、自衛隊だけ拱手傍観できるのかという反論には、二の句が継げないことも当然であろう。歴史的に公明党は創価学会の絶対平和主義の風潮をバックにして、「平和の党」としての印象付けを大切にしてきた。その理論的支柱には政府・自民党が一貫して維持してきた専守防衛の基本方針が崩されることはあるまいという読みの甘さがあったのだ。米ソ対決の冷戦時代には通用した安保観も、冷戦後にモグラ叩きのように発生する地域戦争激化時代には通用しなくなってきていることに、気付かぬままの対応であったのだ。ただ公明党は、体質的にリベラル系新聞の論調を非常に気にする傾向がある。その傾向が今後現れそうなのが、自民党副総裁・高村正彦が示したたたき台にある「国民の権利が根底から覆されるおそれがある場合」という文言について、「おそれ」という表現はあいまいで拡大解釈される余地があるとして、修正を求める意見が出てきそうである。
しかし「おそれ」の表現があろうとなかろうと、政府が集団的自衛権に関係するとしている8つの事例すべてで行使が可能になる方向は変わるまい。たたき台はそれほどアバウトなものであり、時の政権の意向・判断によって対応にかなり差が出る性質のものであるからだ。また、公明党内部には8つの事例のうち、シーレーンで武力攻撃が発生した際の国際的な機雷の掃海活動についても、「世界中で集団的自衛権の行使が可能になりかねない」として、慎重な意見が根強くある。しかし安倍は「機雷掃海もしっかり視野に入れる」と発言しており、譲らないだろう。だいたいホルムズ海峡が機雷で封鎖されるようなことになれば、我が国にとっては死活的な事態であり、たたき台にある「国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される」情勢であることは間違いない。政府は6月22日に会期末を迎える今国会中の閣議決定をまだ断念しておらず、譲歩するにしても早期の閣議決定を目指すものとみられ、17日からの調整は正念場を迎える。
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