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2014-06-15 00:00
(連載2)景気判断 虫の目か鳥の目か
中村 仁
元全国紙記者
あまりこと細かなデータを追うより、日本も米国もゼロ金利、EUはマイナス金利と、主要国の金利があまりにも低い水準に張り付いている異常な状態をどう考えるかが大切でしょう。鳥の目で上空から経済、景気の様子を探ることが必要です。日本が2%の物価引き上げに成功するか否か、米国の景気回復が本物か否かよりも、主要国はそうした状態を長期的に維持できるのかのほうが本来、考えるべき問題です。
ここで3人の経済学者の大局的な見方を紹介しましょう。大局的ですから、主観や仮説が入るのを避けられないため、独善的な説に過ぎないという批判もありましょう。
・主要国の政策金利はおおむねゼロということは、資本が自己増殖できなくなっていることを示している。地球上には、もはやフロンティアがどこにも残されていない。金融・資本市場で高速取引(千分の1とか、百万分の1秒)を推進しているのは、そうした単位で投資しないと、利益をあげられなくなっていることを意味している。バブルの生成と崩壊を繰り返している。バブルの生成の過程で富が上位1%に集中し、崩壊の過程で国家が公的資金を注入し、巨大な金融機関を救済している。(水野和夫氏)
・物価を目標として、金融政策を進めるのは誤りだ。日本ではデフレ(物価下落)が問題なのではなく、所得が下がったことこそ問題だ。その基本的な原因は産業構造の変化にある。金融政策では解決できない。製造業における雇用が減少して、それを賃金が低い部門で吸収しているので平均的な賃金が下落する。中国を中心とする新興国が工業化し、安価な工業製品が市場にあふれるようになった。グローバルな経済構造の変化で問題が引き起こされている。(野口悠紀雄氏)
・経済上の不満、不安が民主政治の舞台において表明される。政治は不安定化する。経済的なグローバリゼーションを民主主義の政治がうまく整合できなくなっている。金融機関の不良債権処理に巨額の財政支出、金融出動がなされ、市場で通貨が膨張した。過剰な流動性はマネー市場に流れ込み、バブルを引き起こす。バブルは早晩、崩壊して悪夢がよみがえる。国家は市場に従属している。脱成長主義へと、現代文明を転換すべきだ。(佐伯啓思氏)
日経の解説記事で「消えた市場の恐怖感、世界的な金融緩和で楽観論」(6月13日)というのが目に入りました。「景気減速が強まれば、中央銀行が金融緩和を長期化し、下支えするとの期待が市場にある」というのです。事実でしょう。目先の波乱を恐れて、そうしたことを続けていくと、金融市場はさらに膨張してバルブの生成と崩壊のワナに一段とはまり、財政の規律がゆるんで新たな危機の原因となりかねない、そこが心配です。(おわり)
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