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2014-05-27 00:00
(連載2)世界が騒然としているのに無関心な日本人
中村 仁
元全国紙記者
その通りであるにせよ、社説にはもっと危機の背景を掘り下げてほしいのです。戦後の国際政治は、米ソ対立の冷戦構造、ソ連の崩壊と冷戦終結、米国への一極集中、イラン・イラク・北朝鮮の脅威の強調、米国の一極集中の崩壊・中国の台頭など、いくつかに区分けされるでしょう。いまや、そうした時代区分にとらわれていると、本当の変化の底流をつかみきれない時代になってきたような気がします。
・民主主義と市場経済が成熟するにつれ、それらの欠陥もめだってきた。民主主義と市場経済に代わるものはないはずだと、いつまでも居なおってばかりいられない状態になりつつある。
・民主主義国では、価値観が多様化し、国としての意思統一が難しくなってきた。情報化社会のスピードが速まる一方、国としての意思決定には多大な時間がかかるようになっている。
・民主主義国では、政権を握り、維持するため、人気とりの甘いポピュリズムが幅をきかせ、財政を悪化させ、結果として経済危機の原因を作っている。
・市場経済、とくにマネー経済のグローバル化で貧富の格差が拡大し、世界を、そしてそれぞれの国を分断している。
・成長や資源の限界、環境の制約、格差拡大など、壁があちこちにあり、それらを克服しながら国内経済を維持していくことに困難がつきまい、はけ口を海外に求めるようになった。
・そうした中で、軍事力主導型、独裁者型の国家が増長するようになった。中国には、欧米型の社会経済モデルには背を向け、力づくで国家権益を確保していこうという戦略がありありとしている。ロシアも独裁者型国家の道を歩む。こうした中で、紛争の平和的解決、法の支配が後退している。
日本についていえぱ、原発の再稼動が容易でなく、将来は再生可能エネルギーへの依存度を高めようとしています。それでは十分なエネルギーは確保できず、経済成長の鈍化どころか規模の縮小が進むでしょう。経済水準、生活水準を相当引き下げないと、財政は悪化し、社会保障が裏づけとなる年金、医療システムも行き詰まるに違いありません。そうした将来図がみて取れるにもかかわらず、裁判所(福井地裁)が再稼動差し止めの判決をくだすのですからね。国としての一体感は失われる一方です。安全保障については「日本が国際紛争に巻き込まれるのが嫌だよ」を助長する新聞があるのですからね。エネルギーは国の経済の基本です。国際環境の安定がエネルギーの安定供給の前提なのに、その国際情勢が波乱含みになっているのです。
韓国大統領は、日本の戦後責任を追及していれば、政権が持つだろうと思っていたことでしょう。今回の客船沈没の背景には、利益をあげるための貨物の過積載で船舶の操舵がきかなくなった、官民癒着で安全管理がなおざりになったなどの問題が少なくともあるのでしょう。他国を批判してナショナリズムをあおった責任は大統領にあります。中国と手を握ろうとしたり、国家運営のやり方をどこかで勘違いしているのでしょうか。中国、ロシアも今のような振る舞いをいつまでも続けられないでしょう。どこかで壁にぶつかることでしょう。国際的な勢力圏を広げれば広げるほど抵抗勢力を増やすだろうし、国内の自由をいつまでも弾圧できないことも確かでしょう。それに気づくまでには相当な期間を要することも確かで、その間、多大な犠牲をはらわなければならないとすれば、不幸なことです。メディアも目先の紛争ばかりに気をとられるのではなく、もっと大きな視点が求められる時代です。(おわり)
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