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2006-11-20 00:00
東アジア地域協力と対ミャンマー政策
田島 高志
東洋英和女学院大学大学院客員教授
経済のグローバル化により、貿易、投資、金融、人の移動など幅広い面で各国間の相互依存関係は益々深化している。同時に、環境、エネルギー、感染症、テロなど、国境を越える問題が多様化し、その解決には各国間の相互協力の必要性が益々増大している。このような現実を踏まえ、世界の各地域では、安定と繁栄を求めて域内協力の枠組の形成が進展している。
例えば、欧州ではEUが25カ国になり、来年は27カ国に拡大する見込みである。北米では、自由貿易地域協定(NAFTA)が成果を重ねており、南米ではメルコスールが活動している。東アジアでは、1967年に設立されたASEANが、「ASEAN共同体」を設立させる努力を進めるとともに、1997年以来毎年開催されている「ASEANプラス3」首脳会議が、「東アジア共同体」設立を将来の目標として掲げ、具体的な機能的協力を17分野で進めつつある。昨年の同会議では「東アジアの協力に関する第2の共同声明」を2007年に採択することが合意された。
これに加えて、昨年開催された16カ国首脳による第1回「東アジア首脳会議」(EAS)は、「東アジア共同体」設立に向けて重要な役割を果す旨の宣言を採択した。さらに、この度ハノイで開催されたAPEC首脳会議がアジア太平洋全域での貿易自由化に向けて努力を続けることで合意した。本年は、これから12月にフィリピンで、「ASEANプラス3」首脳会議、日・ASEAN首脳会議、第2回「東アジア首脳会議」(EAS)が続けて開催される予定である。
これらの動きに対し日本は、それぞれの会議で積極的な役割を果して来ており、今後の方向に重要な責任を負っている。既にASEANに対しては統合支援基金の活用を図り、「ASEAN開発基金」の設立に協力を約し、日・ASEAN包括的経済連携協定交渉を2年以内に妥結させる努力を約した。「東アジア共同体」構想に対しては、開放性、機能的アプローチ、普遍的価値の尊重などの原則を基本に今後とも主導的責務を果す方針と見られる。
ここで、私として注目している点の一つは、ミャンマーへの対応である。ミャンマーは、周知のとおり依然軍政を続けており、人権問題で欧米から経済制裁を受けていることもあり、政治面のみならず経済面でも発展が遅れている。東アジアは上述のとおり、経済的に大きな発展を遂げている現状を背景に地域協力を進めつつある中で、ミャンマーのみが孤立的な情況におかれている。他の東南アジア諸国の多くが独立後軍政や開発独裁を行いながら、経済発展とともに民主化の実現を進めて来た歴史を見るとき、ミャンマーに対しても政治的な民主化を求めると同時に経済発展のために支援を行なうことが、民主化への道を速める効果があるのではないかと考えられる。現状のままでは、ASEANの中でミャンマーの遅れが足かせとなり、ASEANの統合にも支障を来たし、日・ASEAN協力、ASEANプラス3、東アジア首脳会議それぞれの枠組において頭をかかえる問題になるのではないかと思われる。
ミャンマーは、長年閉鎖主義を続けた歴史を持つが故に世界の潮流に意識が薄く、生真面目であるが頑固で自尊心が強い性格を持つ。食糧には困らない。従って、圧力と放置だけでは、民主化も充分な経済発展も望めないと見るべきである。ミャンマーは最近まで長年大変な親日国であった。民主化の重要性も途上国の心裡も理解できる日本が、ASEAN諸国と協力してミャンマーの友人としてミャンマーの政治的経済的発展に協力の手を差し伸べ、他のASEAN諸国の発展になるべく近づかせる方策がないものであろうか。それが出来れば、日本の対ASEAN政策としても重要な意味を持ち、かつ東アジア地域協力の前途も大きな穴や曇りなく進展が望めるであろうと考えられるのである。
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