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2014-04-14 00:00
(連載1)複眼的に考えるべきエネルギー政策
中村 仁
元全国紙記者
政府は中長期のエネルギー政策の指針となるエネルギー基本計画を閣議で決定しました。原発、再生可能エネルギー、火力などの最適な構成を目指すとしています。その核心は原発の扱いですから、国民、政界、メディアなどの評価は二つに割れ、対立しています。原発なしに経済、産業活動は大きな影響を受けずにまわっていけるかどうか、論争は10年は続くでしょう。自分の経験でも賛否双方譲らず喧嘩別れになる議論ですが、対立は不毛ではありません。反対側から問題点を指摘されるたびに、謙虚に自分たちの主張を検証しなおし、誤っている点があれば修正していく機会にすればよいのです。特に政府は今回の計画で示したように、原発を「重要なベースロード電源」に位置づけ、再稼動を進めていくとの立場ですから、反対派からの指摘に耳を傾け、より安全な原発政策へと練り直していくきっかけにしてもらいたいのです。
これまで、わたしは、太陽光発電が脚光を浴びすぎていることを批判し、反原発ブームに乗った細川、小泉連合が敗北した都知事選の予想・分析・検証を行い、複数のエネルギー源を持つべきであること、電力業界が崩壊したら反原発派も困ることになること、などを指摘してきました。
最近、注目したニュースをふたつ紹介しましょう。「東芝子会社がウクライナに対する原発燃料棒の供給を20年まで延長」という見出しの記事で、「ウクライナには原子炉が15基あり、発電量の5割をしめる。天然ガス、原発燃料棒も大半をロシアに依存している。エネルギー源の多様化が安全保障上、重要としている」と描いています。今、国際情勢でもっとも注目されているウクライナの話です。あのチェルノブイリの原発事故を起した経験を持つ国の話です。もうひとつはトルコのエネルギー政策です。トルコもガス輸入の半分をロシア産に頼っています。外相がインタビュー記事で「ウクライナ危機の前からエネルギーの調達先の多様化を進めている。原発建設がロシア依存の代替策だ」と述べ、日本の協力に期待を示したそうです。エネルギーは国の安全保障の根幹であり、海外依存、それも特定の国、地域に偏ることを修正し、自給率を高めることがいかに必要かを示しています。
反原発を単一の争点にしようとして、都知事選に惨敗した細川・小泉連合は、いわば反原発一神教です。とにかく原発を即時ゼロにすれば、皆が代替措置を措置を必死になって考えるから、多様化も進むという楽観論です。それに対し、原発依存度を下げるにせよ、徐々に下げていかないと、経済社会に大きな混乱がおきると考え、有権者は一神教を否定したのです。世論調査をすると、原発否定が7割近くになります。なんの前提条件もつけず、原発ゼロの副作用も示さず、原発に「賛成か、反対か」を聞けばそうなるでしょう。都知事選で示した有権者の判断は現実的で、エネルギー問題には多様なアプローチが必要と判断したのでしょう。原発容認の自民党側が参院選、衆院選、都知事選の圧勝を続けたことの解析を反原発派からぜひ、聞かせてもらいたいのです。 (つづく)
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