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2014-04-04 00:00
集団的自衛権の限定容認が確定的に
杉浦 正章
政治評論家
テレビで「ころころ考えが変わったら国際的信用を失う」と集団的自衛権の容認に真っ向から反対していた自民党元幹事長の古賀誠が“ころころ”変わった。「限定的であれば容認はやむを得ない」のだそうだ。古賀は「自民党がこんなにチェック・アンド・バランスを失った時代はない」とも息巻いていたはずなのだが、この大変化は何だ。まさか夏の内閣改造でノーバッジでの入閣を狙っているのではあるまいが、あらぬ疑いをかけたくなる。自民党の副総裁・高村正彦の党内調整は個別撃破の段階に入った。古賀も落城し、税調会長・野田毅も落ちた。次々陥落する背景には、自民党が野に下って以来5年間も待たされている入閣待望組の思惑が大きく作用している。「集団的自衛権の行使でも何でもやってくれ。俺は入閣したい」のだ。だから自民党内の派閥は「幹部がそわそわして、戦う気がない。もう勝負はあった」(中堅議員)ということになっているのだ。
唯一人目立つのが「絶対反対」の元行政改革担当相・村上誠一郎だが、最近禁じ手を使ってひんしゅくを浴びている。去る3月25日夜、公明党代表・山口那津男、民主党元代表・岡田克也、結いの党幹事長の小野次郎らを集め、集団的自衛権つぶしの秘策を練ったといわれる。こともあろうに、野党と結託してまでもつぶそうとする姿勢には、よほど追い詰められたという意識があるのだろう。しかし、肝心の野党が本気で相手にしている感じはない。現に岡田は4月3日のテレビで「限定容認論が出てきたのは半歩前進」と同調する構えを示している。村上は禁断の木の実に手を出して、信用を完全に失った。野党でも維新は積極的だ。限定容認への6要件をまとめた。野党にしてはあまりに精査されている内容なので調べたら、政府筋の情報が入っているようであり、内容が向かうべき方向を示している。要件は、(1)日本と密接な関係にある国に対する急迫不正の侵害、(2)日本の平和と安全に重大な影響を与える、(3)侵害の排除に他に適当な手段がない、(4)合理的な範囲内での実力行使、(5)支援要請がある、(6)内閣の判断と国会の承認が必要、となっている。官房長官・菅義偉が「建設的議論で、いいことだ」と述べているのは、いささか八百長じみているが、悪いことではない。
政府・与党の態勢は2日の安倍、高村、石破、菅会談で最終的に固まった。限定的容認が大勢となった党内の潮流を受けて、不退転で通常国会末か夏までに閣議決定に持ち込む方針を決めた。この席で安倍は、奇妙なことに二律背反的な指示を出した。安保法制懇の報告は連休後とするが、公明党との調整は急げというものである。報告がないのに調整はあり得ないところだが、公明党もなめられたものだ。安倍にしてみれば、下旬のオバマ来日で集団的自衛権の容認を正式に伝えて、好戦的な周辺諸国への抑止効果を確立したいのだ。こうして限定容認論が大きな潮流として確立した。その基本は「これまでの憲法解釈通りに、自衛権は必要最小限の範囲にとどめるが、最低限度の集団的自衛権は容認され、必要最小限の範囲に含まれる」というものだ。これは反対勢力の「地球の裏側まで米軍について行って戦争することになる」とか「米本土防衛にかり出される」などのでたらめなプロパガンダを否定して、本格的な改憲までこれでしのげるという対応だ。この結果、公明党は共産党や社民党と同一の、世界のどの国にもない「絶対平和主義」路線をとるのか、「限定容認論」という世界の常識よりもやや弱い対応をとるのか、態度を迫られることになる。その実態は公明党の完全孤立化である。
安倍の指示を受けて高村と石破は3日公明党代表・山口那津男らと会談、本格調整に入った。高村は砂川事件に関する1959年の判決を根拠に挙げ、「自民党は選挙公約を検討した当時から、集団的自衛権の行使容認は、武力攻撃を受けた密接な関係にある国の要請などを要件として限定することを目指してきており、政府も方向性は一致している」と説得。 山口は「党内は限定的に集団的自衛権の行使を容認しなくても、個別的自衛権や警察権の行使で対応できるのではないかという意見が大勢だ」と反論した。今のところは平行線をたどっているが、“政権政党の甘い蜜”が結局は態度を決めさせるのだろう。山口は政権離脱までして信念を貫ける男ではあるまい。
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