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2006-11-16 00:00
朝鮮半島をめぐる米中関係をどうみるか
小笠原高雪
山梨学院大学教授
米国の中間選挙は民主党の勝利に終わった。二期目の大統領の与党が中間選挙で議席を増やすことは滅多になく、その意味では今回の結果はとくに異例なものとはいえない。しかし、選挙結果を受けて、ブッシュ政権の対外政策に何らかの変化が生れることは必至であろう。その影響は北朝鮮問題にも及ぶのだろうか。影響が及ぶとしたらどのような内容になるのだろうか。筆者は朝鮮半島の専門家ではなく、限られた知見しか持ち合わせないが、国際政治の研究者として、この問題を素通りしているわけにもゆかない。そこで筆者なりの見方を敢えて示し、御批判や御教示を得たいと思う。
ブッシュ政権の北朝鮮政策に対する主要な批判は、同政権が北朝鮮との二国間対話を拒んだことに向けられている。ブッシュ政権が六者協議にこだわり続けたあいだに、北朝鮮は核実験の準備を進めてしまったというのである。こうした批判はその限りでは正しいであろう。しかし、それでは、クリントン政権が試みていた北朝鮮との二国間対話をブッシュ政権が継続したら、北朝鮮は核武装を放棄したのであろうか。それは好意的に言っても未知数だったのではなかろうか。
朝鮮戦争の当時から、北朝鮮にとって、極東における米軍の存在は統一への最大の障害であった。ミサイルと核兵器はそれを牽制する手段となりうるものである。もちろん、韓国が経済的にも軍事的にも強力となった今日、米軍さえ牽制すれば統一が容易に実現するというわけではない。しかし、金日成にも獲得できなかった手段を金正日が獲得するのに成功すれば、それは北朝鮮内部における彼の威信を高めることには役立つであろう。金正日がそのように考え、行動してきたことは十分ありうることである。もし、そうだとしたら、米国の譲歩によって北朝鮮の核開発が一時的に減速したり停止したりすることはあっても、放棄されることはなかったように思われる。
北朝鮮に核開発を断念させるために、六者協議が十分に有効であるとブッシュ政権が信じていたかどうかはわからない。イラン、イラク、北朝鮮をまとめて「悪の枢軸」と呼びながら、実際にはイラクとイランへの対処に多大のエネルギーを投入してきたブッシュ政権にとって、北朝鮮問題に関する六者協議は「時間稼ぎ」以上のものではなかったという見方は確かに成立するであろう。しかし、六者協議の意味は、果たしてそれだけだったのだろうか。金正日の「計算」はどうであれ、核開発それ自体が北朝鮮の国内不安を解消しえないことは明白である。もし、北朝鮮の急激な崩壊が望ましくないことであるならば、国際社会は結局のところ北朝鮮に支援の手を差し伸べざるをえないであろう。問題はそれを誰がどれだけ負担するかということである。ときどき聞かれる議論の一つに、米国が北朝鮮との対話に積極姿勢を示さなければ、やがて朝鮮半島北部は中国の勢力圏になるであろう、というものがある。しかし、長期的にはともかく、少なくとも短期的には、そうした事態を最も恐れてきたのは中国なのではなかろうか。北朝鮮を抱え込むことは、経済的にも政治的にもきわめて大きな負担を中国に負わせることとなるからである。
もし以上の見方が誤りでないとしたら、北朝鮮をめぐる米中関係の重要な一面は、朝鮮半島の安定化のためのコストの押し付け合いにあることになろう。そして、そのような観点からみるならば、ブッシュ政権の北朝鮮政策にありうる変化の幅はそれほど大きなものではないかもしれない。すなわち、入口や途中経過での部分的な妥協はありえても、北朝鮮の後見人を自任し、その崩壊を最も強く恐れる国に責任を分担させようとする米国の基本姿勢は容易に変化しないかもしれない。われわれは、朝鮮半島をめぐる米中関係の行方を、そのような角度からもみてゆくべきではなかろうか。
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